中編3
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母親の間違った愛

ある日の夕方。引っ越して来た街の散策も兼ねて散歩で交差点を歩いていたら前からお母さんと小学生位の男の子が歩いて来ました。男の子はサッカーボールを軽くドリブルしながら…。危ないな…ふっと思った途端!ボールが壁に当たり道路へ あっ!! 男の子が追いかける!危ないっ!一瞬目を背けました。トントン………僕の足にあのサッカーボールが転がって、止まる。直感的にやばいなと感じました。目の前にはさっきの親子はいない、有るのはなだれ込む様にハンドルにうつぶせになる運転手を乗せた白い車だけ。ギャーーッっ、と同時に女の人の泣く声、狂ったような…泣き声…

恐る恐る車の後部から廻るように前の方へ歩く。ん?前輪辺りで何かにつまづいた…直ぐにわかった!男の子の足!一瞬後ろにたじろいたが、やばい、車の下敷きになったと思い、すかさず覗き込む…有るはずの物が…無い…膝から上の男の子の身体が。

どうなってるんだ!?後ろに下がる、右手に何かが当たる。もう片方の足…

急いで車の前に、お母さんの所に向かう。そこには変わり果てた男の子を、上から覆いかぶさるようにして泣きじゃくる母親の姿。

う゛〜う〜

男の子はまだ生きている!

はっ!と我に帰り救急車を呼ぶ為に携帯をとりだす。いやまてよ、この白い車で運んだ方が早いかも…など考えながら、指は番号を押す。

「あ、もしもし」「事故です、早く来て……」 ん?母親がいない?辺りを見ると道路の反対側でしゃがんで何かゴソゴソ動いている?。すると立ち上がりこちらへ向かって来た。その顔は何かに取り付かれたかのような、血まみれの悪魔の様な顔だった。

右手に何か持っ?ん?石?直径15センチ位の石を持ち、歩いて来る母親。何か嫌な予感がする…

携帯を事故を起こした運転手に渡し救急車を呼ぶように頼む。

「何持ってるんですか?!」

なんの反応もなく、俺は止めようとする。

「ぎゃー」

少しひるむ。その時、目の前に黒い物。石を持った右手。

ほんの数秒意識が飛び、倒れこんでしまう。

母親を捜す。男の子の上に覆いかぶさるように、しかし先程とは明らかに違う様子。

歩いて向かおうとするが、身体が言うことを聞かず…

ドン!ドン!ドン!

母親が!母親が!石で男の子の顔を殴ってる!!!視界に入る運転手は余りの様子に手が出せないようだ。

俺は力を振り絞り、右手めがけて飛び込む。

「何やってる!?やめろっ!」

母親は何かを叫びながら、右手を振り落とす。

「ごめんね、ごめんね、」

「何してるっ!」

「足はどこいったの!?」

「こんなんじゃ辛いね、生きて行けないね、一人じゃ嫌でしょ、ごめんね、死んだ方がマシだよね、」

「お前母親だろ!」

「死んで良いわけないだろ!」

涙を流しながら、母親を必死に押さえる。

「まだまだ生きて行けるから、そんな事するなっ!」

遠くから救急車のサイレン…

もう手遅れだ…。

男の子の横で泣き崩れる母親。

ゴホン、ゲホッ

母親方を見てみるが、声を出して泣きわめいてる。

?!

さっきの咳は…

まさか!男の子の方に近づこうとした途端!

身体が…身体が…うご…かない……

運転手も小刻みに震えながらも、立ち上がる事が出来なさそうだ。突然母親のわめく声が止まる。

母親の視線が男の子に…

おもむろに起き上がる男の子。足は無いのに膝から下で立ち上がり、母親に手を差し延べる…

二人が手を繋ぎ歩きだす。

俺はほとんど動か無い目で必死に追いかける。

どこにいく?そっちは線路だ!まさか…

救急車のサイレンが近づいてくる、大きなサイレンの音。

しかしそれを掻き消す電車の警笛。やがて電車が通り過ぎ、急停止する。救急隊員に説明を求められた。どう答えていい?

俺は線路を指差したまま気をうしなってしまった。

後から聞いた話しですが、携帯で救急車を呼んでから、救急隊員が来るまで、ほんの三分位だったらしいです。知らなかったのですが、事故があった交差点の名前は○○病院前。そしてあの母親はあの朝病院で亡くなっていたそうです。

事実、線路の中には男の子の遺体しか有りませんでした。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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