短編2
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気付いて

始発駅から乗車した僕は、睡眠不足のせいもあり深い眠りについていた。

気が付くと電車の中は満員だった…

次の停車駅を報せるアナウンスが流れた。

電車が停まり、人が降りていく。そしてまた沢山の人が乗ってくる。

朝の満員電車など大概こんなものだ。

僕の前に、1人の女性が立った。

女性は吊革に掴まり、片手で携帯をいじり始めた。

まあ、どこにでもいる普通のOLといった感じだった。

僕は特に彼女を気にも留めずに、もう一眠りしようと目を閉じた。

この時、僕は目を閉じた瞼の裏側に、何故かハッキリとさっきの女性が見えている気がした…

何か不自然なものを見たような気がしてならなかった。

僕はもう一度、目を開けた。

…そして気付いた。

不自然さを感じた理由に。

彼女の体は透けていて、反対側を向いて吊革に掴まる男の人が見える。

この瞬間に、僕は全身の血の気が引いた。

まさか、朝の通勤時間帯に幽霊!?

怖くなった僕は、無理やり目を閉じ、寝たフリを決め込んだ。

きっと彼女の正体に気付いてはいけない。

気付いたなら、何が起こるのか大体分かる。

気にしちゃいけない、気にしちゃいけない。と、何度も自分に言い聞かせた。

身体中脂汗でベトベトになっていた。

電車が停車駅に着き、停まった。

辺りの人の気配が少なくなっていくのが何故かわかった。

その電車を降りる人の気配の中に、彼女もいるのだと感じた。

電車が駅を発車すると、身体中の脂汗が瞬時に引いていった。

僕は、きっと彼女はさっきの駅で電車を降りたのだと思い、目を開けた。

…彼女はまだいた。

僕の顔を覗き込むように、身をかがめて、無表情で僕を凝視していた。

余りの恐怖に僕は気を失った。

気が付けば、電車は終点に到着していた。

僕は電車を降りた。

会社は、もう完全に遅刻になる時間だった。

仕方ないので、上司に遅刻する旨を一報しようと携帯を取りだし、画面を見た。

何故かメールが数件入っていた。

そのメールは全てが同じアドレスから送信されていた。メールの内容は一文字の平仮名だけ。

最初のメールから順に開いていくうちに、僕はあることに気が付く…

メールに打ち込まれた、一文字の平仮名をメールの着信順につなげていく…

気が付いていたくせに…

ふと、僕の耳元で誰かが囁いたような気がした。

僕が恐怖していると、携帯がまたメールを受信した。

同じアドレスだった…

恐る恐るメールを開いた。

そのメールにだけは、一枚の写真が添付されていた

僕は添付されていた写真を開いた。

その瞬間に、僕の目に飛び込んできたのは、さっき僕の目の前に立っていたあの女性の無表情の顔だった…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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