中編5
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明美

グォーン グォーン グォーン ゴボゴボゴボッ

また…この音…

毎日寝る時間になると鳴り出す

5階建てマンションの3階に住む俺は毎晩この音に悩まされてる

毎晩

毎晩

毎晩………

その日は雨が降り、いつものような暑さはない

夜中2時…

さぁ、寝よう

グッグッグォーングッグォーング

グォーン ゴボゴボゴボ………

水が流れる音、それが詰まり、また流れ出す音…僕にはそう聞こえる

そんな日が続いたある日の夜…

ザーーーッ

風呂に入ろうとお湯をためていた蛇口から出ていたお湯が急に……

ギュッ グッグッグッ チョロ ポタ ポタ ポタ

リビングでテレビを見ていた俺はその音の変化に違和感があり、風呂場にむかった

止まってる………なんで……

蛇口をひねる、いくら回してもお湯は出てこない

あ〜古いマンションだから、タンクが故障したんかな…

それくらいにしか思わなかったが、水が出ないのも困る、そう思い、大家に電話する

「あの、すみません、灘区の○○マンション303号室の〇〇です」

「あ、水道でしょ?」

「えっ?そっ、そうです」

少し驚いた…なんで知ってるんだ?

「出ないんでしょう?すみませんね〜」

「明日行くように水道屋に電話したから、今日だけ我慢してくれる?」

「あっ、はい、わかりました…」「で、でもなんで知ってるんですか?」

「え〜、さっきも女の人から連絡あって、タンクがおかしいって」「だからマンションの名前聞いたら、それかなって思ったの」

「そうなんですか…とにかく、明日おねがいします」

次の日…

今日は休みだ、ゆっくり寝れる…

そう思っていたが、朝から水道屋が屋上のタンクで作業をしている

微妙に響く、声、作業音、階段を上がる音が無性に気になり、目が覚めてしまった。

タバコを買いに行くつもりで階段を下り、マンションの踊り場でばったり大家さんと出会った。

「おはようございます」

「おはようございます」

「あなたでしょ?昨日電話してきたの?」

「そ〜ですね、はい」

「ごめんね〜、迷惑かけて」

「いえ。今、直しに来てるんですよね?」

「そうよ、さっきはじめたばかりだからもう少しかかるかも…」

なんとなくで話しを終わらせて、立ち去ろうとした時…

「あのね〜ちょっと聞いてくれる?」

「えっ?何をです?」

正直うざかったけど、仕方なく聞く事にした

「昨日あなたから電話あった時、その前に女の人から電話があったって言ったでしょ?」

「あ〜言ってましたね」

「その女の人なんだけど、電話で303号室の○○明美って言ったの」

「は〜、えっ?303号室?」

303号!?

「言い間違ったんでしょ?」

「いや、なんと言うか、間違いではないの、なんと言えばいいか」

「どういう事ですか?」

「実はね、二年前にその明美って子、このマンションに住んでいたのよ、303号室に」

何言ってんだ?このおばちゃん

まだまだ寝起きで頭は寝ていたが、徐々に話しを理解するごとに目と頭が覚めてくる

「でね、その子がね、突然いなくなったの…二年前に」

「俺の部屋だったんですか?」

「で、昨日あなたが電話してきた時ね、後ろのほうで声が聞こえたの、女の声で」

「しょうやって…」

「えっ!祥也…なんで俺の名前を…訳がわからん…」

とっさの判断で携帯の発信履歴を見る、大家も考えをわかったのか少しづつ携帯の画面を覗く………

発信履歴

23:37 大家さん

09012664580

23:41 大家さん

09012664580

えっ!なんで2回もっ?俺は一回しか大家さんにはかけてない

「俺1回しかかけてないですよね!」

大家はとっさに自分の携帯の着信履歴を見せる

そこには…

俺の番号が2個並んで見えている

どうやら俺の携帯から大家に2回かけたのは事実らしい…

「同棲してる人がいるのかなと思ったの、でも明美って名前がひっかかって調べたの」

「そしたら行方不明だった子だったの…」

ドン!

突然マンションの出口辺りで、鈍く、そして大きな音がなる!

ドン! ドン!

またっ!その音と同時に通行人の叫ぶ声!

きゃー ぎゃー わー!!!

走って外に向かう

!!!

ギィッ!?

そこにはさっきまて屋上で作業をしていた水道屋の姿が三人………

一目で上から落ちてきたとわかる状態で横たわっていた。

思わず上を見上げる

そこにどっしりと有るはずの水道タンクががたがたと、そして軽々しく揺れ動いていた

俺はとっさに屋上に向かって駆け出す

「大家さん!救急車呼んで!」

このマンションにはエレベーターがない

「はぁっはぁはぁはぁっ」

五階の屋上のドア…

右手でノブをひねる

カチャ………キィィィ………

目の前にはあの水道タンクがあった

しかし、さっきまでの揺れはもうない

タンクの下には水がこぼれていた

作業に使ったであろう道具の数々

恐る恐るタンクに近く…

横にハシゴがついていて、それを登ってフタを開けるようだ

ハシゴに手をかける……………

救急車のサイレンの音が段々近いてくる

大家は何も出来ないまま、やじ馬の中で救急車を待っていた

ヴゥーヴゥー

携帯のバイブと同時に着信音が

〜♪あなたは!稲妻の〜よお〜に〜♪わたしの〜身体を〜………

この番号!?

ピッ

大家が電話に出る

「どう?上はどうなってるの?」

「くくくっふふふふっ」

まさか?!

「あんた誰?」

「久しぶり大家さん」

大家は手から携帯を落としそうになるのを掴み直し強い口調で言い返す

「あなた明美ちゃんね?祥也君は?」

「しょうやも一緒にいるよ…寂しいんだもん…」

「祥也君に変わって!」

「もう無理だよ…。ぜんぜん見つけてくれないんだもん…毎日合図を出してるのに来てくれないんだもん、でも、もう離さないよ…」

「あの男の人達落としたのはあんた?!

「私はしょうやに逢いたかったの…あの人達が邪魔するんだもん…」

「ちょっとふざけないで!」

「あっ!まちなさいっ!」

「ブツッ…プープープー」

電話が切れた…

大家はこの上ない不安を覚え、ちょうど到着した救急隊員と共に屋上へ向かった。

「まさかね…まさかね…」

そんなわけないと願いながらタンクのフタを開ける………

「あ〜っ…なんで…なんでこんな事に……」

中には、うつぶせになり右腕がタンクのパイプに吸い込まれている祥也の変わり果てた姿だけがあった。

あれから数ヶ月…マンション全体の水道がダメになっているらしく、タンクとパイプの交換を行う事になりました

一部壁を壊しパイプを取り替えてる時、ちょうど3階部分で詰まりが発見されました

中からは白骨化した人間の遺体が出てきたそうです。

怖い話投稿:ホラーテラー 恐怖とは本能なりさん  

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