中編3
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邪悪なる石像

俺が朝起きて炊飯器を片手にテレビを観ていたら、茶の間へ表情の父親が入ってきた。

友人Aは問い掛けた。

「呪われた歴史を打ち破るにはどうするべきか?」

父親は言った。

「この家に伝わる源頼朝の石像が押入にある。それを岐阜の山奥へ…」

テレビをみると、重大事件が特集されていた。

一刻の猶予もないと俺たちの間には緊張感が走った。

俺と友人Aはタクシーに乗って岐阜に向かった。

途中のコンビニで、奇妙な集落を見つけた。

巫女と神主が海岸沿いで、山の神への祈りを捧げていたのだ。

友人Aは勇気を出して聞いてみた。

「頼朝の石像にまつわる話が聞きたい。」

神主はそれを見て驚くべき事実を打ち明けた…。

80年ほど前、このあたりがまだダムの底に沈む前、大きな竹藪があった。

その竹藪の奥には、見た事もない刀が置かれていたそうである。

神主は言った。

「刀を制する者、日本を統べる力を是非我らに…」

そこまで言った途端、神主は息絶え、あとから村の古老が酒を持ってやってきた。

「私についてこい…」

俺と友人Aはタクシーに乗り、竹藪に向かった。

そこには刀が置かれてあり、ひとつ振り回せば地面が綺麗に切れる、すばらしい切れ味だった。

父親は言う。

「この刀こそが、頼朝の怨念を打ち砕く武器となりえる」

神主と共に、友人Aは刀を持って丘の上に上がった。

石像を探すために…。

空が暗くなり、雨が降ってきた。

しとしとと湿った空気が漂い、俺たちは洞窟へ避難した。

そこは平治の乱で、頼朝の父、義朝が雨を凌いだ場所だった。

友人Aは、洞窟の奥へ奥へと入り、白装束を纏った血だらけの幽霊を見つけた。

幽霊は、地面を指差す。そこには田んぼがあり、稲があった。

神の米…

そう、この神の米を使った儀式で頼朝を呼び起こすのだ。

深い恐怖の怨念は、その儀式で打ち砕く…。

石像を片手に俺たちの間に衝撃が走った。

雷が鳴った。

タクシーに乗って岐阜に行こうとした時、北条氏と名乗る通りがかった村人が言う。

「この先に進むと孫の代まで取り憑かれる。」

それでも先へ行かなければならない。

コンビニで缶コーヒーを買い、つかの間の休息を味わった。

駅を出て岐阜に着くと、禍々しい石像がそばにあった。

「この石像こそが、頼朝の定め」

父親は集落を見ながら涙を流した。

「今のこの世があるのも頼朝の力なり。山奥へ進むことが我の使命」

俺と友人Aは知った。

もう既に父親は事切れていたと。

山奥の頼朝は、後光が差していた。

既に呪いは解けたのか?

その時、俺は見過ごさなかった。

友人Aが日本刀で切りつけた時、頼朝は石像を見て呪いの言葉を吐いた。

後光はまやかしだったのだ…。

旅を終えて自宅に着くと、父親が新聞を片手に言った。

「岐阜の山奥で噴火があった。これぞ頼朝の呪いが突破された証である」

今度こそ本当に呪いが消え失せたのだろうか。

神主の言った言葉が頭から離れない。

「石像を持つもの、呪いは永久に付いていくものなのだ」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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