夜釣りに行った日のこと。
地元の小さい野池だから、夜中に釣りするのは俺一人だろうと思っていたら、先客がいた。
堰堤の中央で、竿を振っているのが見える。
ライトで足元を照らしながら、挨拶をした。
こんばんは、釣れますか。
先客は答えず、ただ竿を振っているだけだった。
俺は堰堤の奥で釣りたかったので、近づいて、
すいません、後ろ、通ります。
と声を掛けた。
それでも、先客は俺を無視して、竿をピュンピュン振っている。
ちょっと腹が立ったので、先客をライトで照らしてやった。
俺はそのまま後退りして、ダッシュで逃げた。
先客は、釣竿でなく、ただのデッキブラシを振り回していたのだった。
怖い話投稿:ホラーテラー ひまわりさん
作者怖話