短編2
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彷徨える霊(たましい)

 

 

これは今から十五年前にあった本当の話です。

具体的な場所は、戦争中空襲を受けた有名な所なので控えさせて頂く事をお許し下さい。

 

 

その日は会社の研修で、宿泊所が同一場所になっている市内の或る所に滞在していました。

講義が終わり、夕食を兼ねての懇親会の為に一旦荷物を置きに同室となった、Aさん、Bさん、Cさんと宿泊する部屋に寄ったのですが…。

そこは西側の窓からドアに向かって一直線に続く造りになっていて、室内には何とも言えない重苦しい感じの雰囲気がその時点から漂っていました。

 

懇親会を終え入浴を済ませて部屋に戻ってみると、構造上止むを得ない事とは言え二組ずつ向かい合わせに敷かれていた布団のうち一方が北枕に…。

 

「気にしても仕方ないけれど、場所柄一応寝る時は枕直しますね」

 

Bさんと私の言葉にAさんとCさんも了承してくれて、みんなで就寝に入りました。

 

深夜に目が覚めて、防災用に用意しておいたペンライトで枕元の腕時計を見ると午前二時半…。

お手洗いから布団に戻った寝入り端にそれは起こりました。

全身を襲う物凄い金縛り!!!

過去に幾度か経験はありましたが未だ嘗て無い強力なもので、しかも足元で誰かが布団を踏んでいる気配がはっきりと伝わって来るのです。

 

(南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏。南無妙法蓮華教…南無妙法蓮華教…)

 

驚愕と恐怖のあまり思わず反射的に、少ないけれど知っている念仏を繰り返し唱えていました。

暫くして金縛りは解け、それと同時に気が緩んで気絶してしまったのか、次に気が付いた時は朝になっていました。

 

同室のみんなが起きて身支度を済ませ朝食を待つ間、夜中の出来事を話そうとすると、それより早くBさんが青褪めた顔で

 

「誰か夜中にお手洗いに行って朝まで帰らなかった人いる?Dさんが出て行って戻って来たのは知っているけれど、その後また目が覚めた時に誰か出て行ったみたいだけど」

 

AさんとCさんはぐっすり眠っていて、途中で目が覚める事はなく朝を迎えたそうです。

その後語った私の身に降り懸かった話と併せて、全員が震え上がった事は言うまでもありません。

 

 

Bさんと私があの夜経験したのは、一体何だったのでしょうか?

やはり思い当たる節と言えばこの街の歴史的な背景と、実は講義の中にもそれに一部関連する内容があった事…。

何れにしても無念のうちに亡くなった沢山の罪なき尊い命の事を考えると、遣る瀬無い気持ちになって心から手を合わせずにはいられません。

 

 

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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