中編3
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こわかったのでコピペ

「絶対にあってはならないことなんだけど。。。」

と、キクチさんは

「遺体と一緒に納棺されたものに手を付ける輩がいる」と、焼肉の網から立ち上る煙に眉をしかめながら言った。

キクチさんは、葬式関係の仕事をしているのだが、経営体制のきちんとしていない会社の中には素性の知れない人間を使うこともあるのだそうだ。

去年の夏、葬式関係者の集まりが伊豆で行われたとき、彼は恐ろしい話を聞いた。

「関西の方で起きた話らしいんだけどね」

ある人がビルから転落して亡くなったのだという。遺体は大部分がチリトリで集められたほど、損傷が激しかった。

「可哀想なことにその青年には若い婚約者がいたそうで」

ふたりでするはずだった婚約指輪は遺体と共に納棺された。

ところが、請け負った葬式会社にひどいヤツがいて、その婚約指輪を火葬場に搬送する途中、蓋を外して盗んでしまったのだ。

そして、それが皆にばれていないとわかると、指輪を質屋に売り払ってしまった。

しばらくすると、その男の様子が明らかにおかしくなってきた。

葬儀の途中で、悲鳴を上げたり欠勤が続くなど、仕事が怪しくなってきた。

仲間が不審に思い、理由を聞いても、彼は口をつぐんだままだった。

そんなある時、盛大な葬儀があった。

全てが終わり、僧侶を寺まで送っていくと、男は、仲間のいる前で

「実は、死人に祟られ

ているのです」

と、口を開いた。

仲間が驚いていると、僧侶は

「わかっていました。しかし、既に手遅れでしょう」

と、振り返りもせずに境内に戻っていった。

それから、男の様子はますますおかしくなっていった。

風呂にも入らず、食事もとらなくなっていた。

「その男が仲間に話した所では、始めは視界の端に肉の塊が映るようになったのだそうだ」

言うまでも無く、その肉の塊というのは、亡くなった青年の姿である。

それが、日を追うごとに、男に近づいてきた。

始めは、遠くに立っていただけなのに、今では押入れや部屋の風呂に姿を現すようになったのだという。

内臓や骨、血管でできたオブジェが黙って男を見ていた。

「あるとき、その男は絶叫すると完全なパニックになってしまって」

男は、見舞いに訪れた同僚に、一部始終を涙ながらに告白した。

男は

「食べてしまった。。。」

と、言った。告白によると、肉は既に男の顔面目前に近づくようになっていた。

しかし、男には何もせずに立っているだけの肉に多少の「慣れ」が生じており、

「やれるもんならやってみろ」と、開き直りにも似た感情が芽生えていた。

ある晩、彼は息苦しさに目を覚ました。思わず目を開けると、肉が男の口の中に入ってきていたのだという。

男は、絶叫し、入院したのである。

しばらくして男は会社を解雇されてしまった。

社長がクビにしたのではなく、男が自分で自分の目をえぐり出してしまったのだ。

「もう見なくて済む」

男は、そう言って、包帯で膨らんだ顔を見せ、笑った。

「でも、結局は目を取っても、頭の中で幻影が見えるみたいで、そいつは《今度はいつもいる、消えない、まだいる》と、ついに発狂してしまったらしい」

キクチさんは、ロースを一度、網に押し付けると口に運んだ。

怖い話投稿:ホラーテラー いちこさん  

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