短編2
  • 表示切替
  • 使い方

未遂

私が保育園に通っていた頃の話です。

当時まだ車の免許が無かった母親に自転車の後ろに乗せられ、近所のスーパーに買い物に来ていました。

母親は買い物がいつも長くなるため、当時から本が好きだった私は、レジ横とかによくあったくるくる回る台に置かれた「世界名作絵本」などを読んで時間をつぶしていました。

ボーッとしていた私がスーパー内をうろちょろすることは絶対無かったので、母は私がいつものように絵本を読んでいるのを確認して、買い物していました。

レジに支払いにきた母と合流する、それがいつもの流れです。

その日もいつもと同じでした。まだ字の読めなかった私は絵だけを夢中で見ていました。

すると向かい側から突然、

「なにしてるの?」

と、声をかけられました。声の方向に顔をあげると、やたらとニコニコしたおじさんがいます。

「本みてるの」

人見知りで警戒心が強かったため、知らない人と話したくありませんでした。

一言だけ返し、また本に顔を戻します。

「何歳?ひとりなの?」

「なんたらかんたら~‥」

小さかったため、なんと話し掛けられていたか曖昧ですが、おじさんは質問をやめません。

私もニコニコ顔のおじさんに少し警戒を解いたのか、それとも暇だったのか、本を見ながら受け答えしていました。

「かわいいね」

「どこの保育園行ってるの?」

「どこに住んでるの?」

「遊びにいかない?」

ここら辺から、私は恐怖を感じ始めました。

「ママときてるの、ママを待ってるの」

私は恐怖を感じだしてから、母といることを強調しました。

でもおじさんは怯みません。ニコニコしたままです。

次第に気味が悪くなり、

「ママのところに行く!」と宣言して本を置き陳列棚の通路に入りました。

私は小走りで母を必死に探します。

他の棚の通路と真ん中で合流する、スーパー特有のあの真ん中の通路に出ました。

ふと隣の通路をみると、おじさんがいます。隣の通路で追ってきていたんです。

私は半泣きでした。

目を棚越しに合わせながら、おじさんはニコニコと笑っています。

ある通路で母親を見つけたときは、半狂乱でした。「変なおじさんが追っかけてくる!!」

「え?!」

半信半疑の母が、棚の間からニコニコとこっちを見ているおじさんをみて、同じく半狂乱になり私を抱き抱えスーパーを出たのは言うまでもありません。それから二度とそのスーパーには行きませんでした。

今でも覚えている恐怖です。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete
コメント怖い
10
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ