短編2
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仮説

…湖で粗相をさせることにしました。

するとその子どもがグルンとこちらに首を回し言いました。ママ…今度は落とさないでね…」

「きゃぁぁぁぁ」

「…あの今更そんなベタな怖い話で怖がらないですよ、てかうるさいです」

「ぴぎゃぁぁぁぁ」

「いやうるさいですって」

有名な怖い話だ。要約すれば、子どもを望んだ美形の両親の待望の第一子が醜い子だった。

両親は子どもを湖に連れていき、ボートから落として殺してしまう。

数年後生まれた第二子はとても可愛らしかった。

そしてある日子どもが湖に行きたいと言い出す。

ボートに乗って楽しんでいるとオシッコがしたいと言い、仕方なくボートからさせようとすると子どもが振り向き、言う。

「今度は落とさないでね…」と。

先輩はニヤニヤしている。

「さてこの話には様々なバリエーションがある。崖バージョンだったりコインロッカーバージョンだったりね。しかし一つとして、その後の話が無いんだ。」

「いや、それがオチなんじゃ…」

「うん。だからこれが実話だったとして、だ。この両親はその後どうしたと思う?」

不気味な事を言う。考えた事もない。怖い話は怖い話としてしか捉えていないから。

だが前の子どもの生まれ変わりなのだ。確かによく考えたら気味が悪い。

「つまり、育てたのか…殺したのかって事ですよね?」

「まあ普通なら育てるよね。殺す場合もあるかも。でもこうは考えられない?第二子は初めから存在しなかったとか」

「え?存在しない?」

「そう。その両親の頭の中にしか存在しない子ども。狂ったんじゃないかな。」

「そっちの方がしっくりこない?」

「ていうかね、わざわざ生まれ変わってまで復讐なんてしないだろ。俺だったら憑くね。」

ゾワッときた。第一子が狂わせた?…そういえば彼は生まれ変わり否定派だったな。

「周りの人達からはどう見えていただろうね?滑稽だよ。居もしない子どもをあやして、お散歩させて」

「お風呂に入って一緒に寝て。オムツも替えただろうね。子ども自慢もするだろう」

「笑えてくるよ。人を殺した人間が、都合のいい幸せを手に入れる事なんかできるもんか」

彼は笑った。誰に言うでもない虚ろな言葉。

ものすごく悲しそうな笑顔だった。

馬鹿が、と最後に小さく呟いた言葉は聞き流しておいた。

この話に対しての憤りでは無い気がしたから。

怖い話投稿:ホラーテラー 雪さん  

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