短編2
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夢枕に立つのは

夢の話は不評だけど、不思議だと思ったから投稿するよ。

うちの祖母ちゃんは8人兄弟の下から2番目なんだけど、上の6人はもう他界してる。今年八十七歳だから仕方ないんだけど、最近よくその兄弟の話をするんだよね。

誰其は優しかったとかあの人は気が短かったわ、なんて。

話してる最中は昔を懐かしむみたいにほこほこ笑ってるんだけど、最後は決まって

「死に目に会われへんかったんだけが心残りやけどな」

って、少し悲しそうに言う。

これはもううちの親族の皆が知ってる事なんだけど、亡くなった6人全員の死に目に一度も間に合わなかったらしい。

らしいっていうのは当時は私がまだ子供か生まれる前だったから、そういう事実があったと後から聞いて知ったんで、その時実際何があって間に合わなかったのかは知らない。

ただ両親はそれについてあまり話したがらないし、祖母ちゃんたちの兄弟仲が悪かったと認識してるみたいなのは何となく感じ取れる。

でも私は、本当は仲が良かったんじゃないかって思ってる。

だって亡くなった兄弟は皆、だいたい前日から一週間前くらいの間にもれなく祖母ちゃんの夢枕に立ったらしいから。

またらしい、になるけど祖母ちゃんが言うには6人は、死ぬ前にそれぞれちゃんとさよならを言うために会いにきてくれたんだって。

兄弟で最初に亡くなったすぐ上の姉さんは、亡くなる当日の明け方に枕元でじっと正座したまま祖母ちゃんを見つめてて、その時祖母ちゃんは何もできないもどかしさみたいなのを感じて悲しくなって目が覚めた。そして姉さんの訃報。

それからは誰かが亡くなる前には必ず夢枕に立つようになって、だんだん祖母ちゃんは自分が皆を送り出す運命なんだと思うようになったんだって。

長く闘病してた兄も、突然倒れてそのまま逝ってしまった姉も。

昨日、一番下の弟の奥さんから、もう意識もない状態だから顔を見にきてほしいって連絡があった。

「一人残ってしまうんかいな」

ぽつんと呟いた祖母ちゃんの声が寂し過ぎて、ちょっと泣いたんだ。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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