短編2
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自殺病院

「爺ちゃん、婆ちゃん…先に逝きます」

無数に並んだ建物。ネオンが光り、夜でもこの街は明るい。何だかそれを見ていると妙にいつも心が穏やかになる。

…俺はそのまま屋上から飛び降りた。

目が覚めると、どこか知らない部屋の中に居た。薄暗い室内に黒色の壁。殺風景でカレンダーなど何もない。

俺以外にも5、6人ほど他に人が居たがみんな無表情。ぼんやりと立っていたり体操座りしたまま床を見つめたり、横になっている者も居た。

「あの…」

ここが、どこなのか知りたい。さっきからずっとお腹を撫でてうろうろと歩き回っている、自分と同じ高校生くらいの女の子に声をかけてみた。

「…そう、…ああ…うんうん」

でもずっとお腹を撫でながら、こちらをみようともしない。

腕を軽く掴んでみると

『妊婦。電車に身を投げ死亡』

その単語が頭に浮かび一瞬ゾッとして手を離した。ここはきっと死後の世界だろう。なんとなく今ので悟った。

想像と違う…花畑でもなく川もない。閻魔様もいない。自殺者は特別なカテゴリーなのかも。

そう考えていると、ゆっくり音を立てて扉が開いた。外から白衣を着たまだ若い医者が微笑しながら入ってきた。

「いらっしゃい。これから君たちをカウンセリングしていくから、一列に並んでね」

…死んだのに、何故?意味が分からない。

周りの人は無表情に、ただ急かされるとそのままゾロゾロと並んだ。

前から順々に別室に案内されている。そのまま戻ってこない。とうとう俺の番がやってきた。

「どうぞ、こちらに」

案内されて入った部屋な、綺麗に掃除されてライトも明るい。中心にあるテーブルの上には花をさした花瓶まで飾られている。

「えっと、じゃあこれからどうしたいかな?」

「どうしたい…って、もう俺…」

「ああ、死んだ後…これからさ。希望として」

何なんだ…どうこうなるものでもないだろ。

「…とにかく眠りたいです。永遠に。若しくは無に返りたい」

医者は、カルテにペンを走らせていた。

「大体君みたいな事言うのが一番多いね。あとは天国に行きたい、もっと良い人生が歩める人間に生まれ変わりたい…とか」

黙って話を聞いていた。

「まぁ…無理なんだけどね」

「地獄に行くんですか?俺たち」

「まぁ、平たく言えばそう」

目の前が真っ白になった。

「カウンセリングして、完璧な状態になったら地獄に出す。特殊なケースのみね」

気が狂いそうになる。

「まぁ、しばらくここに君はいる訳だから。すぐって話じゃないから安心して」

あとの方の医者の話は良く覚えてない。

続きます

怖い話投稿:ホラーテラー 携帯中毒さん  

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