中編3
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自殺病院3

ここからカウンセラー視点です

僕がここに来てどれくらい経つだろう。少なくともこの病院内では誰よりも長く居る。

カチカチとシャープペンシルを弄り、カルテを眺めながらぼんやりと考える。

そもそも僕は医者ではない。大人っぽく見られるが年齢も17歳だ。ただ医者志望ではあったが、医学については勉強した覚えがない。

僕も自殺者だ。自宅で首を吊って目が覚めたらこの病院内にいた。何故か白衣を着て。

『これから来る人をカウンセリングして下さい』

そう書かれたメモ用紙が壁に貼られ、手にとって見ながら不思議がっていると人が来た。自分と年が近そうな女の子。

「…どうしました?」

カウンセリングなんてした事がないし、どうして良いか分からない。ただ白衣を着ていると気分が出る。相手は目が虚ろだ。

やる事もないので、とにかくそこに座っていた。相手は立ったまま。

数日経つとポツリポツリと自殺した原因をその子は話し始めた。無表情だった子が、今度は泣いてばかりの子になった。

その後は少しずつ…笑う子になった。

僕も幸せだった。先生と慕ってくれ、楽しかった頃の会話も出来る。

でもある日…

散歩していつも通り部屋に戻ろうとすると、何か様子が違った。気のせいと思い扉を開けると見たこともない景色と共に、巨大な門があった。

「…あ…」

門から無数の手が延びたと思うと、その子を掴み中に引きずりこんで行った。

門に近づくと扉がもう閉まっている。叩いても開かない。

ふと、足元を見るとまたメモ用紙があった。

『お疲れ様です。彼女は地獄に行きました。これから来る人達を引き続きカウンセリングして下さい。』

ゾッとした。

投げ出したくなった。もしかしたら自分のせいで…?

でも、僕がこの仕事を続けていると彼女に会えるかな。どうにかなるんじゃないか?何か行動せずにはいられない。それに…他にすることは何もない。

それからは何人も人がやってきた。

共通していたのは、みんな未成年だという事。

自殺原因はバラバラだけど、一貫性があった。

『ある子は、妊娠したと彼氏にバレると急に冷たくされた。

ある日相手から心中を持ちかけられた。同意し一緒に電車に飛び込もうとしたが彼氏は動く振りをした後、元の位置に戻ったらしい。

絶望した目で見たが彼氏は目を逸らしていた…それが最後の景色だったと』

『ある子は、塾でずっと1番を取っていた。

だけど親友の座を奪ってしまいそれ以降虐めに遭い始めたらしい』

『ある子は、親から愛情を受けなかった。

家族から食事は与えられるものの、その他は無視。話しかけても空気の様に扱われ、ただ毎日1人分多めに食事がテーブルに並ぶ…お供え物の様だったと苦笑していた』

みんな、自殺だが他殺に近い。他者から『死んで欲しい』と激しく思われていた者達だ。

自分もそう。

やがて看護師達もやってきた。この人達も自分と同じ様な者かと思ったが違った。時間が経つと動かなくなり、泥の様に溶け出す。使い捨ての人形の様に。ただパッと見は人間。患者が居るときは普通に話しもする。

…自分はいつになったら地獄に行けるのだろう?

毎日考えながら、白衣を着続ける。

怖い話投稿:ホラーテラー 携帯中毒さん  

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