長編8
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私の知人を紹介します

思ったよりも長文になりました。苦手な方はスルーでお願いします。

仕事仲間で友達のKの話。

3回目くらいに仕事でタイ国に行った時の出来事。

この国は古いものと新しいものが入り乱れててなかなか面白い国で、私のお気に入りだ。

首都バンコクで仕事が終わりホテルで一息ついてるとKから、

「仕事で○○行きだ。」と言われた。

最近ハードスケジュールでやっとゆっくり休めるなぁ…って考えてたんだが。

「いつ?」と、聞き返すと、

「今から。」と、ニッコリ答えてくれた。

いつもは飛行機で移動するところなんだが、

「車で行くよ。そのままホーム(タイ国東北部)に戻るし。」

って事ですぐにホテルをチェックアウトして車に乗り込む。

私は○○に行った事なかったから途中で運転交代できるかなぁ…っと考えてると、

「俺が運転するから大丈夫。」とKは言った。

背筋がゾクッとした私は、

「人の心を読むな。」と言うと、Kはニッと笑ってみせた。

ハイウェイでバンコク郊外を抜けた頃、疲れが溜まってたのか私は助手席でいつの間にか眠ってしまっていた。

どれくらい走ったのだろうか?目を開けると片側三車線の道路だった。と、言っても車線なんかない。

外を見ると建物はなく薄暗い空と真っ黒な大地が重なって見えた。おそらく何かの畑かジャングルなのだろう。

舗装されてるとはいえメンテナンスもろくにされていない波打つツルツルの道路を120km/hで飛ばしていく。

Kは私が起きたのに気付いたのか、

「ちょっと眠くなってきた。ガソリンもないし次のGSで休憩するよ。」と言った。

「運転交代しようか?」とシートを起こしながら言うと、

「道、分かるならね。」とKはニッと笑ってみせた。

「そうだね。」と、私は返しておいた。

暫く走っているとGSの灯りが見えた。スピードを落としGSに入ると、給油せずに広い敷地の休憩スペースに車を止めた。

Kは外に出るとトランクから茣蓙のような敷物と枕を出し、車の横に敷物を敷くとそのまま寝てしまった。

最初見た時はちょっとビックリしたが、こちらではコレが普通のスタイルのようだ。

私は外に出て煙草に火をつけセメントでできた段差に腰掛けた。暫く暇を持て余した私はGSの敷地内にあるコンビニに向かうことにした。

コンビニに入る前になんだか違和感?を感じた。と、いうより嫌な感じ。暑いこともありネットリと空気がまとわりつく。

寝起きで勘も働かない私は気にせずコンビニに入った。レジの奥で椅子に腰掛けた女性がこっちを見た。

都市部のコンビニと違って物揃いは悪かったが、コレも普通のこと。水と濡れタオルを買い外に出る。

隣のレストランは昼間だけ営業してるようで真っ黒だ。レストランといっても壁もなく食堂といった感じだ。その食堂の前に屋台が出てた。

近くに行ってみると、この国で数少ない私の好きな食べ物‘バミー’があった。簡単に説明すると味の薄いラーメンといったもの。

丁度お腹も空いてたから注文してテーブルに腰掛ける。

なんとなくKの方を見るといつの間にか敷物の上で胡座をかいで座っている。

あれ、もう起きたのか?と思い、暫く見てると、Kは何かをジッと見てるのに気がついた。

その視線の先を追いかけると、GSの出口の方を見ているようだ。

私もそちらに目を向け注視した。コンビニに入る前に感じた嫌な違和感はここから感じたのに気がついた。

何かあるな…と思い目を凝らす。アレは?…頭の中に映像が思い浮かぶ。

こちらの国の街中ではどこでもお目にかかる‘アレ’だ。いうなれば‘神棚’みたいなものか。実際の神棚はどこの家庭にも家の中に祀ってある。が、アレは少し金銭的に余裕のある家庭の屋外や庭の片隅に祀ってある、あえていうなれば‘社’的存在。

家の中の神棚には言葉通り仏像を置き祀ってあるが、屋外の社にはそれ以外のもの…“子孫繁栄”や“商売繁盛”といった願いをこめている。

形状はというと基本的に一本足に台座があり家の形をしたものが乗っている。高さは1.5m程。材質は昔は木製だったようだが、今ではセメントで作り表面をタイルを敷きつめ綺麗に仕上げている。

しかし、そのGSの出口に佇んでいる社は大きめのようだ。高さは2mは越えているだろう。家を支える足は四本あるようで、上から下まで同じ幅である。このGSのオーナーの信心深さが伺える。

私が感じる‘違和感’…Kが感じない筈はない。そう思いKの方を見ると、Kの目前…3mくらいのところだろうか、白い靄がかったモノが見えた。Kはあいかわらず胡座をかいでソレを見ていた。

(いつの間に!?)…そう思っていると、靄の中からKに向かって‘手’のようなものが出たのが見えた。あっ!…と思った次の瞬間…「バンッ!!」…という音が頭の中に響いた。実際には音はしなかったかもしれない。しかし私は「バンッ!!」という音を耳でなく頭で感じた。

Kの頭は有り得ないくらい後ろに仰け反り、顎は空を見上げていた。

何が起こったのか理解できない私は、ボーゼンとそこに転がるKの姿を見ていた。

1秒の間もおかなかったはず。そんなっ!?有り得ないっ!?Kがっ!?…私は頭の中でそんな言葉を連呼していた気がする。

次の瞬間…私は暗闇の中で目を開けていた。体に冷たい汗を感じながら、周りを見渡し自分の状況を確認した。

外を見ると建物はなく薄暗い空と真っ黒な大地が重なって見える。その中にある真っ直ぐな道を車で走り抜けていた。

シートを起こしかけた私の耳に、

「ちょっと眠くなってきた。ガソリンもないし休憩するよ。」と、Kが言った。

と、同時に私の頭の中で先程の夢がフラッシュバックされる。予知夢?デジャヴ?私の中を変な感覚が襲った。その時何と答えたのか覚えていないが、夢の中で何と答えたか思い出そうとしていた。

さっきまでのリアルな嫌な感じがまだ脳裏にあった。私はおもむろに後部座席を見渡しある物を探した。

「たしか、地図はトランクにあったかな。」と、Kは言った。

頭の中を覗かれたような気がしたが、その時は気にしてなかった。Kも私がいつもと感じが違うのを気付いたのか、

「どうかした?」と、聞いてきた。

私は夢での出来事、そして靄のようなモノにKが撃たれた事を話した。

「それは怖いな。でもガソリンも無いし、眠いまま運転するのはもっと怖い。」と、言うとGSに車を走らせた。

夢の中で見たGSがそこにはあった。給油スタンドに2人のスタッフが椅子に腰掛け話をしている。その奥にコンビニ、隣には暗くなった食堂、その前に屋台があった。そして駐車スペース…その駐車スペースに夢と同じ様に車を止めた。

運転席から降りるK。私も続いて車から降りてトランクに向かう。トランクから地図を取り出し煙草に火をつけセメントで出来た段差に腰掛け街灯の下地図を広げた。

すでに敷物の上ではKが寝転がっている。Kは私の話した夢を信じてない訳ではないのは、これまで一緒にいた私自身がよく分かっていた。夢の中の出来事…それもまた面白い。そう思ってるのだろう。Kのそういう所も面白いと思う自分自身がいた。

地図を広げながらGSの出口の方を伺った。夢の中と同じだ。嫌な感じがする。ただ悪意のようなものは感じなかった。

もう少し間近で見れば…と思い、後部座席に地図を投げ入れ出口にある社に向かった。

社に近付くにつれ、夢で見たものより大きいと感じた。それは私が立っている場所よりも30cm程土が盛り上がった場所に社が建っていたからだ。白いタイルで表面を装飾された社は、間近で見ると余計に大きく見える。天辺には黄色の花で作られた‘首飾り’が飾ってあった。こちらでは仏像などにお供えするポピュラーなものである。

さっきまで感じていた嫌な感じは何故か首筋の後ろから感じられる事に気がついた。

不意に後ろを振り向くとKが胡座をかいて座っている。そして私とKの間には夢で見た靄が形作っていた。

(やばいっ!!)…そう思った瞬間「バンッ!!」と、夢で聞いた音が鳴り響いた。

私は夢で見たデジャヴ?の様な変な感覚に襲われた。私は夢で見たようにKを撃ったであろう靄に向かって叫んでいた。

「随分汚い言葉を使うんだな。」

耳に入ってきたその言葉が私を暗闇に押し戻した。我に帰った私は、薄暗い空と真っ黒な大地が重なる道を走る車の中にいた。

(繰り返している!?)…冷たい汗と変な感覚を後ろに感じながら、

「汚い言葉?」と、シートを起こしながらKに聞いた。

「アイ・ヒアー(くそったれ)って言ってた。寝言か?」と、Kは笑って答えた。

「そう…」と言った私は後部座席で地図を探した。ルームランプを点け地図を見つけ広げて目的地までの道を確認した。

「あれ?」と、言ったKに

「地図はトランクにあると思った?」

「ガソリン給油したら休憩しないでいいよ。運転交代するから。」と、告げた。

「君はいつから人の心を読むようになったんだ?」と、聞いたKの顔は真っ直ぐ見たまま口元に薄い笑いを浮かべていた。

私は夢での出来事、そしてその夢が繰り返している事…だから給油だけしたらすぐに出発しようと言った。

「ふ〜ん。」と、言ったKは

「って事は夢の続きは分からないのかぁ。そいつの目的も。」

私は夢の出来事を思い出しながら軽く何度か頷いた。

「じゃあ、僕が教えてあげるよ。」

その言葉を聞いた私の頭の上には“?”が出ていたんではないかと思う。そんな私を尻目にKは話を続けた。

「そいつはね、君と遊びだかったんだよ。僕を巻き込む形になったけどね。自分の存在を感じてくれる君が来て嬉しかったんだろうね。だから悪いヤツじゃない。けど…」

「何回も頭を小突かれてさぁ、ちょっとムカついた。だから…思わずそいつの頭を捻ってやったよ。ぐりんって…」

耳から入るその言葉に変な感覚を覚え、その時の情景が頭の中で浮かぶ。Kの発する言葉は“言霊”のように命を持ってるような気がした。

私の反応を見たKはニッと笑い、夢の中で見たGSに入っていった。

駐車スペースに車を走らせようとするKに、

「給油ダロ。」と軽く突っ込むと、

「そうだった。」と、言い給油スタンドの前で車を止めた。

車から降りたKは出口の社には目もくれず、コンビニに歩いていった。続けて車から降りた私は店員にお金を渡し給油してもらう。出口の社を気にしてみたが、夢で感じた嫌な感覚は無かった。

給油が終わり運転席に乗り込んでKを待つ間、ふと(これも夢なのか?)…と頭を掠めた。夢であろうが無かろうが、心の準備だけはしておこうと思った。

暫くするとコンビニから出てきたKは屋台の方を眺めながらこちらに近づいてきた。助手席に乗り込むと水と濡れタオルを渡され、シートを倒し大きく伸びをし、寝る体勢に入っていた。私は水を一口飲み、出口に向かって車を走らせる。

出口に聳え立つ社の傍らに夢で見た靄が見えた。社に隠れるような靄の中に薄く人の姿が見える。しゃがんだ体勢で背中をこちらに向けていた…が、顔もこちらに向き、怯えた表情が見えた。

思わずKの方を見ると、すでに半分は夢の中であろう…「フンッ」と鼻を鳴らしていた。

私は不自然に首の曲がったソレに「すまないね。」と言い、目的地に向かって車を走らせた。

おしまい

怖い話投稿:ホラーテラー 千羽鶴さん  

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