中編3
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定番すぎる幽霊

夏の暑さにぶっ倒れそうだ。

体調を崩して仕事を休んで、今日は1日家には1人だけ。死んでる奴を除いては。

昔から引っ越す度に先住民に出くわす俺。そして必ずと言っていいほど髪の長い色白の女、白いワンピースだ。同一人物かと疑うほど。

いつもは家族が怖がるといけないので黙っていたが、今日はそいつに聞いてみた。

「よう、なぜ死のうと思ったんだ?」

『えっ?なんか見えてるし、あなたお話もできるの?』

「質問に質問で返すなよ。」

『う………。』

「まあいい、質問を変えてやる。なぜいつも白いワンピースなんだ?」

『う〜ん、ただ好きなだけかな?女の子らしいし…。』

「そうか…、似合ってるぜ。他にも色々聞いてもいいか?」

『うれしい……。答えられる範囲なら…、いいわよ。』

「なんで毎晩鏡の前でニタニタ笑ってるんだ?」

『あー、それは笑顔の練習だよ。笑えば嫌なことってどこかへ行くでしょ。』

「なんだ、俺を見て笑ってるのかと思ってたよ。こう言っちゃあなんだが、1人で笑ってると気持ち悪いぞ。」

『ごめんなさい。もうしません。』

「あ…、いや、別にいいんだが……。何もしなくても十分可愛いと思うぞ。」

『お上手ね。でも悪い気はしないわ。』

ヤバい……。惚れてきた。幽霊が好きになるって、ホントに俺どうかしてやがる。

2時間ほど楽しく雑談したあと、ほんの数秒だと思うが会話が途切れてしまった。なんだか間が持たなくなった。

「なぁ……。」

『……なあに?』

「もう一度聞くが、なんで死のうと思ったんだ?こんなに明るくて可愛いのに。」

『う〜ん、私ね……、最近お仕事がつらくなってきてたの。派閥っていうやつかな。お前はどっちの味方なんだ!って。私は敵とか味方とかじゃなくて皆仲間じゃないの?って反発しちゃったの。』

「そうか、それから虐められて自殺……か。そいつら脅してやろうか?」

『やめて…。その人たちを恨んでるわけじゃないの。ただ、生きる気力が無くなってしまった私が悪いの。』

「う………。」

『でもね、良かったことも色々あるよ。あなたに会えたっていうのもその1つね。』

「社交辞令だとしても照れるじゃねえか。」

『…………………。』

「……………………。」

『ねぇ……。』

「……なんだ?」

『私たち、生まれ変わってもまた会えるかなぁ?』

「し、知るかよ。でも神様ってやつが本当にいたら今度は生きてるうちに会えるように頼みたいな。」

『……うん。』

「じゃあ俺そろそろ行くわな。二度と自殺なんかしようとするなよ。」

『うん。ありがと。私、すてきな男性を見つけてかわいい赤ちゃん生んで、あなたがいなくても幸せに生きていくんだから……。』

言葉と裏腹なのは頬を伝わる涙が静かに語っていた。

彼女にはこれからも頑張って生きて欲しいと切に願っている俺がいた。

年間3万人にも及ぶ自殺者。彼女のように自殺未遂者に至ればその数は計り知れないだろう。

怖い話投稿:ホラーテラー みうまさん  

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