中編3
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続 みっちゃんの案山子

おぞましい案山子を見た回想からの後日談となります。

あれからかなり長い時間が経ちました。僕も社会人となり、田舎を離れて、遠い街で生活をしていました。多忙続きの生活、長期休暇が取れたのも久しぶりの事でした。長い事田舎に帰っていませんでしたので、実家でゆっくりする事としました。

久方ぶりに眺める故郷の風景は、かなり様変わりしていました。畑ばかりが目立っていた自宅周辺も、住宅やアパートが侵食する様に増えていました。

近所のお年寄りは亡くなったよ、あの子はもう結婚して出ていったよ…そんな話を聞いていると、

『こうやって時代は変わっていくもんなんやな…。』

と一人で感傷に浸ってしまいました。

そんな折、母親がビクッとする一言をいきなり切り出して来ました。

『T(僕の名前)、みっちゃんって覚えてるか?』

『みっちゃん!?』

その瞬間、全く意識から消えていた、みっちゃんの優しい笑顔…またそれに反する様に佇んでいた落ち武者バリのグロテスクな案山子の記憶が甦りました。

『みっちゃん?、あぁ…あの小太りの明るいおばちゃんなぁ。みっちゃんがどうかしたか?』

『…あのなぁ、最近死体で見付かったんや。近所の山奥で。しかも酷い死に方やったみたいなんやけど、詳しい事は誰も知らんみたいやわ。』

『はっ!?マジで!?』

『あんたらが子供の時は、優しくしてくれてたみたいやけど、ちょっとよく分からんとこもあったやんか?死ぬ前の何年間かは誰も姿見てないし、家族もおるんかすら分からん様な人やったからなぁ…。』

『それにしても…酷い死に方ってどんな?自殺?他殺?何も分からんの?』

『うん。ただ発見した人が、長い鉄棒が身体に刺さってた…みたいな事を言ってるらしくて。私は直接聞いてないんやけど。警察もはっきり言わんし、新聞に小さく載ったっきりやし。』

『(長い鉄棒…!?)』

僕はギョッとしました。全身に粒立ちの良い鳥肌が、津波の様に押し寄せます。そう、その話を聞いて、あのおぞましい案山子を思い出したからです!

それにしてもそんな恐ろしい事件がこの町で起こるなんて信じられない気持ちでいっぱいです。そしてすぐに僕は、案山子の展示場と化していたあの広大な畑を思い出しました。やけに気になる。あの畑は、今はいったいどうなっているのだろうか…??

次の日、友達との約束の時間を遅らせてまで、あの畑を確認しに行く事にしました。あれから何年過ぎたのか…多分、開発されて、あの広大な畑も住宅が立ち並んでいるのだろう…。勝手にそう決め付けていた僕の予想は、ことごとく外れる結果となりました。

かつて案山子だらけの畑であったその土地は…今もひっそりと当時の面影を残している状態でした。意外にも住宅は一軒も建っていません。ただ、当然案山子は完全にその姿を消し、雑草塗れの荒れ放題。みっちゃんが死体で見付かる何年も前から、みっちゃんは姿を見せなかった…そう母親は言っていましたが、この有様では確かに畑仕事をしていた形跡すらありません。みっちゃんは何処で何をしていたのか?自宅も何処か分かりませんし。母親に聞いても、

『みっちゃんの家?知らんなぁ。』

の一点張り。ただむざむざと無情なまでの時間の経過を見せられただけ…。僕は何を求めてここに来たのだろう。そんな事を考えながら荒れ果てた畑を眺めていると…畑の奥に…農機具小屋を見付けました。草むらに覆い隠される様に佇むあばら家。すき間風が吹き込み、雨漏りは当たり前…長年みっちゃんも立ち入る事すらしなかったのでしょう。そういえば子供の頃に、何となく見た記憶があります。

さて、このあばら家。見付けた以上、入ってみないと気持ちが収まりません。まだ外は辛うじて明るい時間帯でしたので、少し入ってみる事にしました。ほんの少し、あばら家に入るだけですから…でも、剥がれ落ちそうな入口の扉を見つめたまま、嫌〜な予感に襲われました。何故かって?そりゃあ持ち主は奇っ怪な死を遂げ、詳細は不明。しかもあの落ち武者の様な案山子の所有者ですから。

それでも好奇心を抑えきれずにゆっくりと扉を開く事にしました。

…続く…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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