短編2
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憂鬱

はじめまして。少しグロテスクな表現を含みます。

5年程前の話。友達の友達が体験した話し。彼をAとする。

午前7時。Aはその日も電車を待っていた。

高校へ通うための下り列車。専ら、Aが通う高校の街は年々過疎化が進んでいる。

若者は都会に憧れて、地元を離れる。遊ぶにもこの街を離れないと何も無い。

プルルルルー。

「まもなく…..」

聞きなれたアナウンス。駅員のマニュアル通りまた機械的な、抑揚のない声が駅構内に流れる。

この時刻は下りと言えど、サラリーマンや学生で溢れている。

Aは中間部分の車両に乗ることになっている。入学当初からこの位置で、大した理由は無い。

この日も近所の友達と、たわいもない話で、待ち時間を消化していた。

「やっと来たぜ!あぁまた退屈な学校生活か」

ホームに電車が入ってくる頃だろうか。

バン!!

どこからか激しい衝突音が鳴った。同時に老若男女の断末魔のような悲鳴も交じる。

「なんだよおい」Aの友人は明らかに狼狽しているのがわかった。

「後ろの方か?」Aは悲鳴の声を辿り後部車両の方へ足を運ぶ。

直後Aは後悔した。

ホームには男の首らしきものが、ゴロンと落ちている。白線を血と溢れた脳みそが生々しく汚している。

死体だけでは無い。帰り血を浴びて茫然自失する男子学生。発狂するサラリーマン。嘔吐する人。

Aは整理しようと深呼吸して今の状況を反芻しようとするがままならない。

今日もごく普通の日常を過ごすはずだった、取り柄もない普通の学生だ。

なのに今理解し難い世界にいる。

Aは意識を失った。

後日談によると、その後警察の実況見分や遺体処理が行われたらしい。もちろん目撃した乗客の救急搬送も。

被害者は三十代のサラリーマン。

サラリーマンの後ろにいた男子学生の証言によると、サラリーマンは「なんで俺なんだ。止めてくれ、これ以上俺を苦めるのはやめてくれ」と小さく呟いて、引き寄せられるように飛び込んだとのこと。

遺族も死ぬ理由に見当がつかないことから、自殺と処理された。

自殺はいけない。どんな理由があろうと、人の人生を狂わす。

精神的外傷を負うこともある。今までの日常に戻れない者もいる。Aも当時のことがフラッシュバックされ、鬱状態になるらしい。

そういう俺も耳に強く焼き付いて離れない.....ずっとこれからも。

「なんで俺なんだ。やめてくれ。これ以上俺を苦しめるのはやめてくれ」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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