中編6
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消えた幼なじみ

俺が幼稚園の頃、姉貴の仲良しだった幼なじみの女の子が行方不明になった。

その直前まで姉貴や学校の友達と遊んでいた。

その当時、俺は幼いながらも大人達が青ざめた顔をして話していたのを覚えている。

何故、この話を投稿しようと思ったかと言うと、先日姉貴が俺の家に遊びに来た時に、『なぁ…さっちゃんって…覚えている?』

そう聞いて来たので、『あぁ…居なくなった娘でしょ?判るよ…。でも詳しい事は良く覚えてないなぁ…』

テレビを見ながら話しをしていた姉貴は、真剣な顔で俺を見つめて…『やっぱり…さっちゃん、死んじゃっているよ…。』

そして、ゆっくりとその当時の詳しい状況からその『死んじゃっている』と言う訳を話し始めた…。

当時、姉貴達は小学2年生。姉貴とさっちゃんは幼稚園の時からずっと同じクラスで本当に仲良しだった。

そんな事だから、自然と親同士も仲が良くお互いの家を行き来していた。

さっちゃんが消えたその日…。

夕方まで自分達の学校で同じクラスの娘達とゴム飛びをして遊んでいた。

夕方のチャイムが鳴り、『遠き山に陽は落ちて…』と帰りを急かす音楽が流れ始めると自然に荷物を持って校門を出た。

空き地を抜けて突き当たりでクラスの娘達と別れた。その先の公園でさっちゃんが、『ねぇ…朱美ちゃん(姉貴)公園でちょっと遊んでいかない?』

9月も終わる頃…。まだ、少し明るいとは言え低学年の女の子が遊ぶ時間ではないと姉貴は思ったらしく、『今日はもう帰ろ…。』

そう言うと、さっちゃんの両親はその日、帰りが遅いらしく家に帰ってもつまらないと言っていた。

姉貴が、『じゃあ、あたしンち行こうよ!後でお母さんに電話してもらえば良いし…ねっ!』

すると、さっちゃんは夕飯時だから悪いと言って断った…。

この公園に居れば、必ず両親のどちらか通る。早く帰って来た方と帰るから、此処にいると言っていた。

姉貴はボソッと…。

『あの時…無理にでも家に連れて行けば、あんな事にはならなかったと思うよ…。いや…絶対に今でも、さっちゃんは私の仲の良い友達だっただろうよ…。』

目に涙をいっぱい溜めて、姉貴はバックからハンカチを取り出した。

そして…さっちゃんと別れた…その夜。

さっちゃんの母親から電話があり、そっちに行っていないか?と聞いてきた。

姉貴と俺は同じ部屋で寝ていたが、この時に姉貴が起こされたのは覚えていない。

姉貴は夕方まで皆と遊んでいた事、公園で遊ぼうと言われた事、親が帰って来るまでうちに来ない?と誘った事…詳しく話した後にさっちゃんの両親は警察に捜索願を出した…。

何ヵ月の間、姉貴は責任を感じていた。学校も休みがちであった。

一緒に遊んでいた友達も同じらしく、元気が無かったそうだ…。

さっちゃんの両親はそんな姉貴を不敏に思い、『大丈夫だから…。』と良く元気付けに来てくれていた。

何にも手掛かりが無く、半年が過ぎた頃だった。

当時、お昼の番組で捜索特集番組があり、誰が応募したか知らないが番組が街にやって来た。

『そう〜なんですよ…〇〇さん!』

と、話題になった番組…。(わかるかなぁ…。)

小学校・道のり・公園。

知ってる所が画面に映っていると言うのは面白いと思った。(不謹慎だと今は思うが幼い頃の本当の心はこんな感じ。)

その番組の途中と最後に連絡先が出る…。その後、結構な数の電話連絡があったそうだが、手掛かりはゼロだった。

そして姉貴がさっちゃんが死んだと言った理由を話してくれた…。

姉貴には2人娘がいるシングルマザーだ。

小学5年生と2年生。(都美【みやび】に美咲【みさき】)

バツイチでちょくちょく家族揃って俺の家に遊びに来ては、何か持って帰る…。

まっ、俺にとってもかわいい姪っ娘だが…。

話を戻そう…。

この下の娘(美咲)が先日、学校から帰って来ないと上の娘(都美)から姉貴の携帯に連絡が来た。

いつもなら一緒に帰って来るのだが、その日は都美が運動会でリレーの練習があるから美咲を先に帰らせた。

夕方、都美が家に帰ると美咲がまだ帰っていなく、近所を探したが何処にもいなかった為、母親である姉貴に連絡した。

姉貴は急いで自宅に戻ると、都美と美咲の両担任がいたそうだ。

都美が自分の担任に連絡したらしい。

一応、担任が学区内にある交番には家に来る途中で事情を話し、もしやの時に直ぐ動ける体制をとってくれていた。

…数分経った時、姉貴は声が聞こえたそうだ。

おもむろに窓を開け、周りを見渡しても誰もいない…。この時、姉貴は自分にしか聞こえていない声なんだと判っていた…。

何度か窓を開けて周りを確認する…。

しかし、その声はだんだんはっきりと聞こえるようになる…。

その声は紛れもない、美咲の声…。

姉貴は居ても立ってもいられなくなり、その場を先生に任して外に出た。

その時、姉貴は一心不乱に自分の中で聞こえる声のする方向に走った…。

『頭の中で聞こえる声の方って説明しても判んないでしょ…。簡単に言うと近づく感じ…?』

すると、坂の下に2人の女の子が見えた…。

姉貴は自分の目を疑った…。

見えたのは娘の美咲と…その横には…いなくなった頃そのままの、さっちゃんだった。

不思議と恐怖感は無く、それより止めど無く流れる涙が心地良かった…。

娘が無事と言う安心感と、さっちゃんに逢えたと言う嬉しさと…。

そして、姉貴が娘の名を呼んだ…!

『美咲ーーーっ!』

『あっ!ママぁ〜!』

全速力で走って来た。

叱りもしたが、何より無事という事に感謝した。

姉貴は遠くに去って行くさっちゃんの姿が目に入り、思わず叫んだ…。

『さっちゃぁーーーん!』

さっちゃんは曲がり角で手を振っていなくなったそうだ。

美咲に事情を聞くと驚きの事実が解った…。

美咲が帰る途中に車から1人の老人が降りて来て、駅を教えてほしいと聞かれた…。道順を話していると、車に乗って案内してくれと頼まれた。杖をついているくらいの老人だったので可哀想と思ったらしく、乗ろうとした時にさっちゃんが美咲の肩を叩いたそうだ。

『あの娘ね…そのおじいちゃんを凄い目で睨んでいたの…。私ぃ、女の子がそんな顔しちゃ駄目って言ったらニコニコしてた。』

すると、その老人はあたふたしてブルブル震えていたらしく急いで車を走らせて何処が行ったそうだ…。

その後は公園で一緒に遊んで、学校のチャイムが聞こえたから帰ろうと言われ、家に向かうところだった。

『ママ、なんでさっちゃんの名前…知ってるの?』

美咲は不思議に思っていたに違いない。

家に戻り、両担任にお礼を言い、交番にも無事に帰って来たと連絡を入れたそうだ。

『その夜…夢の中でさっちゃんが出て来たんだ。

いや…夢じゃないかも知れないなぁ…。お礼をした時に手を握った感覚があるのよ…。私が話しているんだけどさっちゃんはニコニコしながら頷いているだけだった。

でも、最後に一言…ありがとう、朱美ちゃん。って言ってくれた…。何にもしてあげられなかったのに…。

私、個人の見解なんだけどさぁ…さっちゃんはその老人に殺されて、自分のような子供が二度と出ないようにその老人に憑いているんじゃないかなぁ…。供養してあげたいんだけど、さっちゃんのご両親、今はどう思っているのか…?』

俺も話を聞いているうちにそう思っていた。

さっちゃんは姉貴の娘だからでは無く、いろんな子供を救っているのかなぁ…と。

この話…これでは終わらなかった。

その翌日の朝…。

テレビで不思議な交通事故のニュースをやっていたらしい…。

その事故は直線道路なのに横の壁に正面からぶつかって車が大破…。『この近くだねぇ…。』テロップには地元の名前が出ていた。

ドライバーはフロントガラスを突き破り、車と同じく壁に当たり即死…。

その大破した車の横・後方部分や室内が映し出された時、美咲が言った。

『ママ…。この車と同じ、昨日のおじいちゃんの車…。椅子のクッションも一緒だよ!』

運転手の名前が出てその横に年齢が出ていた。

62歳…と…。

姉貴はちょっと怖くなったそうだ…。

そのニュースが終わる時、何故か再びその事故の場面…、野次馬の中に…

さっちゃんが手を振っていたそうだ…。

それも…満面の笑みで…。

怖い話投稿:ホラーテラー 血魅呶露さん  

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