中編3
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家の霊道

結構前のことですが、私の家の周りではよく自殺が起きていたんです。

あるときは、隣のおじいさんが・・・

またあるときは、向かいのおばさんが。

私の家の前には川が流れているのですが、その川沿いにある大木の枝で首をつる人が多々いました。

その影響なのか、私の家の近くでは、幽霊を見る人が多く、ちょっとした心霊スポットとして村の人に有名でした。

私の家はまさに、そこにドンピシャリの場所。

私は、よく幽霊を見ていました。

外ではなく、家の中で。

私が部屋で遊んでいると、どこからともなく風が吹いてきて、その直後に部屋の窓に女が現れたり、

洗面台で歯を磨いていると、玄関のほうに老婆が立っていたりと

まだ幼かった私は、「お客さんかな?」ぐらいにしか思っていませんでした。

でも、一つだけ怖いことがありました。

寝ていた私は、深夜に目が覚め、トイレに行きたくなったんです。

一人では怖く、隣で寝ていた母を起こして行こうと思い、母に声をかけました。

「ねぇお母さん、トイレ・・・」

すると母は、目をこすり、眠いながらもトイレに付き合ってくれました。

母にトイレの前で待っていてもらい、オシッコをしようと便器に腰掛けると、

おそらく、換気扇の中?だと思うんですが、ものすごいうめき声。

例えるなら、牛の鳴き声のような感じ。

夜も遅かったので、さすがにビックリし

急いでトイレをすまし、お母さんに泣きついて、そのことを話しました。

実は、母も霊の存在には気付いていて、少し怖かったようです。

これをきっかけに、私の家はお払いをしてもらうことになりました。

神主さんがやってきて、家の前から、一部屋一部屋お払いしてくれました。

お祓いが終わった後、神主さんが、

「ここは霊道になっています。

しかもかなり大きい・・・家にある鏡は全て、霊道が別のところに移るまで、外しておいてください。」

神主さんが言うには、霊道は、小さくなれば どこかに移ってしまうんだそうです。

やはり鏡は良くないらしい。

そういわれ、家の鏡を全て外し、倉庫にしばらく、しまっておくことになりました。

鏡の無い生活は思ったよりも不便で、私はいつも、窓のガラスに自分を反射させたりしていたんです。

ふと思いました。

これも鏡と似たようなものなんじゃないかと。

案の定、その瞬間はすぐにおとずれました。

いつものように、ガラスに自分を映して服の確認をしていると、廊下の方に女の人が立っているように見えました。

ゆっくりと、廊下を行ったり来たり・・・

私は、ガラス越しにそれを見ていました。

まるで道にでも迷ったかのように

最後に、こちらに歩いてきて、私のすぐ脇を通り過ぎていき、どこかに消えてしまいました。

しばらくして、またあの神主さんがやってきました。

周り一体をお祓いした後、「鏡は、もう大丈夫ですよ」と言っていた。

どうやら、霊道はどこかに移ってしまったらしい。

お祓いのあと、私は神主さんにあのときのことを話してみた。

すると神主さんは

「それは、多分霊道が狭まって、通れなくなってしまったから、少し困っていたんだと思うよ」

と言っていた。

後日、あの大木から、女性の遺体が発見された。

同じ村の住む、大学生の女性だった。

私が見た女が、その女性だったのかは分からないが、おそらくそうだと思う。(勘ですが)

なぜ自殺が多かったのかは、今でもよく分かりません。

それ以来、私の家に幽霊が出ることは無くなりましたが、

今でも鏡を見るたびに、ふと自分の後ろに視線がいってしまうんです。

また、誰かが立っているような気がして・・・

怖い話投稿:ホラーテラー ネギさん  

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