中編5
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日本人形

私が高校入学したばかりの頃の話です。

父の地元、祖父の住むそばに引っ越すことになりました。

同じ県内ですがそこは県の端っこで遠くです。

高校は町の高校だったので、遠くなるのはいやでしたが、受験する前から決まってたことだし、

友達もいない高校に行くくらいなら電車で通うほうがましでした。

私達は祖父が昔は人に貸していたという家に引っ越しました。

祖父は畑仕事をしながら1人で暮らしていました。

祖父は厳しい感じの人で、私はあまり近寄りませんでした。

それまで疎遠だったし、息子である父も小学校から従兄の家で育ったせいか

祖父によそよそしいところがあったせいもあると思います。

でも近くですぐ会えるようになったからか、

私を喜ばせようとこけしや鏡と櫛のセットなんかを持ってきてくれました。

ある日、日本人形を祖父が持ってきました。

私は人形が苦手なので、箱に入れて部屋の押入れの奥にしまいこみました。

2、3日経ってから変なことが起き始めました。

必ず明け方に目が覚め、またすぐ眠るのですがその夢に女の人が出てきます。

もんぺ姿で髪をまとめてます。農作業をしてたり見たことない土間にいたり。

目が覚めてその後夢を見る、は10日くらい続きました。

その日の明け方も目が覚めました。ただいつもと違いました。

その女の人がそばに座って私の足に触っているのです。

布団越しにその感触がわかりました。

「これ夢だよね・・・いや夢だ・・・起きなきゃ・・・」と思いますが目は開いています。

目をつぶってみましたが腹、腕と触られているのがわかります。

薄目を開けると女の人は枕元に来ていました。

夢に出てくる女の人です。

もんぺ姿、まとめた髪。1つ夢の中と違うところがありました。

額に大きな釘が刺さっていました。

うっすら明るい部屋の中ではっきりと見えました。

私は叫び声を上げました。女の人はいなくなり、両親がやって来たので今起こったことを話しました。

私の様子がただごとではなかったせいもあり、翌晩から父母の部屋で一緒に寝ることになりました。

すると朝まで眠れるようになりました。

1週間後くらいに学校から帰ってくると、母は出かけてました。

1人で家にいるのはいやなので、祖父の家にでも行こうとかばんを居間に置いて玄関に戻ると、

「どん」という音が2階から聞こえます。

「え?」と聞き耳を立てるとまた「どん」と何かにぶつかるような音がします。

泥棒かもしれないとそっと出て祖父の家に駆け込みました。

祖父は「お前は危ないからここにいなさい」と出て行きました。

外の様子を窓から見ていると、母の車が帰って来たので家に向かいました。

駐車場で母に事情を話すと、車に乗ってなさいと言われました。

中で待っていると祖父が家から跳び出てきました。手に祖父の上着でぐるぐる巻きにした何かを持っています。

母が駆け寄り心配しています。私も車から降り近づくと祖父が「お前は見るんじゃない!」と叫びました。

それより驚いたのは祖父の手が血だらけだったことでした。

祖父は病院に行き、帰ってきてから父母と話し込んでいました。

翌朝母が私にくれた人形は、返してほしいと祖父が持って行ったよ、と淡々と告げました。

今まで起こったことはみんな人形のせいかもしれないと自分を納得させました。

しばらく何もない日々でした、が・・・

私の体に小さな水ぶくれのようなものができてきました。

病院にも行きましたがこの病気だ、というのははっきりせず、

どんどん広がって足の裏や手のひらにもできてきました。

できてはつぶれ、またできるの繰り返しで肌はぼろぼろになりました。

痛みは全くなかったです。

顔にもできていて、肌荒れと縁がなかった私は外に出ることが恥ずかしくて辛くて、

学校から帰るといつも泣いていました。

父母が見かねて、帯状疱疹ということにして学校を休ませてくれました。

居間の隣の和室に布団をひいて寝ていました。

このまま治らなかったらどうしようと思いながら、そのままうとうとしてしまいました。

目が覚めると夕方です。部屋の隅にあの女の人が立って見ていました。

額には大きな釘が刺さっています。口元は笑っていました。

急にひどく絶望感がわいてきて、大声で泣き出しました。

隣にいた母と祖父が横のふすまから入ってきました。

女の人はもういません。

私は母に抱きついて女の人が来た、とわんわん泣きました。

すると祖父がいきなり「すまん!!」と土下座をしました。

びっくりしていると祖父は泣いていました。

大人が泣くところを見たことがない私は呆然です。

「すまん・・・すまん・・・」と私に謝り続けます。

母が居間に連れ戻そうとしますが、祖父は頭を下げたままです。

「勘弁してくれ・・・そんなにわしが憎いのか・・・」

厳格な祖父には似合わない弱々しい声でつぶやきました。

次の日も休んで母と病院から帰って来ると、玄関に靴がたくさんあります。

居間から祖父や父、父の姉達の声がします。

母は「邪魔になるから出かけようね」とまた私を連れて車に乗りました。

何でみんな来てるの?と聞くと一言だけ「相談があるんだって」と言いました。

その夜父が母と私を呼び、「前の町に戻る」と言いました。

何で?とは思いましたが、いろいろ怖い目にあったこの家には住みたくありませんでした。

今考えると無茶なスケジュールで部屋探し、引越しとなりました。

引っ越す日、祖父が1人で引っ越しの様子を見ていました。

私は何となくそばに行き「おじいちゃん、また来るから」と言いました。

すると祖父は優しく笑みを浮かべて「もう来なくていい。心配するな。これでお前も大丈夫だ」と私の頭をなでました。

町に戻ってから水ぶくれはどんどんなくなっていきました。

生活が落ち着いてきた頃には、何もなかったかのように普通の肌になっていました。

女の人もあれから見ることはありませんでした。

その後は祖父の話もタブーみたいな雰囲気になり、会わないまま祖父は去年亡くなりました。

畑で倒れていたそうです。

後に父の姉に聞きましたが、父は姉が3人いるのですが、父だけでなく3人とも祖父母に育てられていないそうです。

それぞれ親戚の家で育っています。

また祖母は亡くなったと思っていましたが、

父が小学生になった頃に離婚し、実家に戻りその後再婚しているそうです。

怖かったことだけは確かですが、訳がわからないことだらけでした。

あの女の人は?あの2階の音は?なぜ祖父は怪我をしたのか?日本人形はどうなった?

なぜ私にだけ水ぶくれができ、治ったのか?祖父が言った言葉の意味は?

祖父が亡くなった今となっては、もうわからないままです。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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額に釘って、想像しただけで怖すぎる!
謎だらけの話ですね。
後日談を聞きたかった。