中編5
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ドロップアウター

26歳のAは、失業した。

今のこの雇用危機の時代、

何十社も面接を受けたがことごとく不採用…

貯金も底を尽きかけ、故郷の厳格な両親に仕事を失った事は口が裂けてもいえない…

嘘で固める自分と、不採用の毎日…

日に日にやつれ、家賃も払えず、このままでは家も失ってしまい、先の見えない不安から、完全に生きる希望を失っていた…

最近は同じ境遇の人達と交流するサイトが、Aにとって、唯一の救いであり楽しみであった…

今日も面接の連続、家に帰り携帯でサイトを開き面接した会社の情報や合否の話など、話す話題は尽きない…

《ドンドンドン!!!》

いきなりアパートのドアが強く叩かれる。

「Aさ〜ん!いるんでしょ?!今日こそ払ってくださいよ!聞いてますか?!」

大家だ…

働きたくても働けない…

払いたくても払えない…

ここの所、大家は毎日きて、Aは追いつめられていた…

何一つ思い通りにいかないAは、携帯を握りしめ悔しさから、歯を噛み締め、大家にバレないよう…声を押し殺し涙を流す…

『もう…沢山だ!』

何かを決心し、サイトの仲間に提案する…。

[こんな不条理で弱者が不幸な思いをする世の中は沢山だ!!

みんな…こんな腐った世の中からオサラバしないか?!]

サイトには何十人も参加していた。

励ましや批判や同情…

色んな反応する仲間がいたが、その提案に賛同する者が3人いた。

[賛成!!俺ももう嫌…]

[確かにこんな世の中で生きていたくない、もう…来世で頑張りたい…]

[あたしもやる…どこでいつにしますか?]

Aは3人とアドレスを交換し、数日後待ち合わせの約束をした…。

免許持ちはAだけだったので、貯金を全て引き出し、レンタカーで車を借り、待ち合わせ場所へ…

選んだのは富士の樹海…

素人達が思いつくのはそこしかなかった…

待ち合わせの時間、ポツポツと現れる仲間達。

同じ、旅立つ仲間…

軽く自己紹介した。

Bは俺と同じ位の小太りの男性

異性に全くモテず、対人関係が嫌になり仕事が続かずに嫌になった…

Cは30代後半の女性

バツイチで最愛の息子を取られ、生きる希望を無くした…

Dは20代後半の色白の女性

恋人に振られ、ショックから立ち直れずに…

軽く自己紹介を済ませ、

俺達は最後の晩餐を…

と、ファミレスに行き食事…

これから死のうとする俺達。

明るい話題なんかなく、それぞれ世の中や相手に罪をなすりつけ、暗い話のぶつけ合い…

だがDだけは、ずっと静かに聞くだけだった。

死に対しての恐怖から…と、他の者は気を遣い、代わりに口を開く。

店員が話題も聞こえてたろうし、チラチラこちらを不審がる…

Aは通報される前に出ようと、ファミレスを出て、車で目的地へ…

車内の空気はとてつもなく重い…。

すると…

D「ごめんなさい…ちょっと吐きたいからトイレ行かせて…」

高まる緊張感からか仕方ない…

車を止め、トイレへ…。

付き添いでCも一緒にいく。

車で待つAとB。

会話などない。

残り数本の煙草に火をつけ、2人を待つ…。

長い…

20分後、

2人が車へ戻る。

2人共真っ青な顔をしていた。

“覚悟”ができたのだろう…

樹海到着。

やり方はこうだ。

Bが医者に、嘘を言い睡眠薬をもらう。

皆が眠ってる間に、

Dが買った練炭で……。

時がきた…。

今まで以上に空気が重い…

窓の隙間とマフラーを塞ぎ、それぞれ睡眠薬の錠剤を手に、飲んだら練炭に火を…というシナリオ…

Dの手が震える…

D「あ…あたし…やっぱりできない!!」

目の前の【死】にたいしての恐怖で怖じ気づくD。

運転席のAと、助手席のBも同じだった…

《ザクッ》

「あうぅっ!!」

車内に奇妙な音とDの悲鳴が鳴り響き、驚き振り向くAとB。

Dの胸に果物ナイフが刺さりピクピク痙攣するD。

C「死ねないならあたしが殺してあげる…」

透き通るような囁き声でCが言った。

C「あんた達は?!早く薬飲んだら?!」

先程とは違い、声を荒げ別人のように怒鳴るC。

Bは恐怖から失禁し、泣きながら喚く…

《チッ》

Cが舌打ちし、助手席と運転席の間から身を乗り出し、後ろから果物ナイフをBの腹に突き刺す。

Bはパニックに陥り、

腹から流れる自分の血を手で何度も拭くようにし、真っ赤に染まる両手を見て、痛みと恐怖でさらに泣き喚く。

C「あんたは?死ぬんでしょ?自分から言い出したんだもんね?」

後部座席からBの悲鳴の中、Aに問い掛ける。

Aはハンドルを震えながら強く握り口を開く…

A「も…もちろんだよ…」

そう言ってバックミラーを見る。

??

角度的に写るはずなのに、バックミラーには胸から血を流すDしか写っていない…

不可解な事が起こり目が動揺し、振り返って確認したいが怖くてできない。

首筋、背中に冷や汗が湧き出て鳥肌がポツポツ…。

Bの悲鳴が落ち着き、

気絶したようだ…

《………………》

Aは固まったまま…

口を開く事すらできない…

〈…さぁ…

…早く死んでみせてよ…〉

静寂の車内でAの頭に直接Cの声が響いた。

「うわぁーーー!!」

Aは悲鳴をあげ、

ドアを開けようとするが開かない、仕方なしにエンジンをつけ急発進。

〈あはははははは!!〉

頭の中でCの笑い声が響いて頭を押さえ、完全に恐怖に支配され震えるA。

車はさらにスピードを上げる。

樹海の森から入ってきた入り口まで猛スピードで進む車。

木や斜面に乗り激しく揺れる車。

《…ヒタ……》

急にAの首に冷たすぎる手が巻きつく…

驚いたAは反射的にバックミラーを再度見た。

そこには目が赤く、皮膚が斑点状に紫色に変色してただれて、髪がボサボサで、おでこが深く割れ血を流し、頭蓋骨も割れているCがいた。

〈死にたいんでしょ?〉

再度頭に響き、恐怖で死にたくないと思ったAは、肘で何度も窓を叩きつけて割り、冷たい手を強引に振りほどき、走る車の窓から飛び出した。

その瞬間再び、頭で声がする…

〈……うそつき……〉

地面に転がり、土と枯れ葉まみれになるA。

車はそのまま猛スピードで直進し、太い木にぶつかり、黒煙がでてボンネットから火がつく…。

みるみる炎に包まれる車内…

Cは炎に包まれながら、

窓越しにずっと…

Aを赤い目で睨みつけていた…

警察が来る前に何とか逃げて帰ったA。

後日、

公立図書館で新聞を読み漁ると、一年前、Cは息子を失ったショックで自宅マンションから飛び降り自殺をしていた…

恨みや息子に会えない寂しさから、自殺しようとする者達を集めて道ずれにしようとしていたのか…

今ではわからない…

その後Aは両親に全てを打ち明け、援助を求めて努力が実り、無事に社会復帰ができた。

Aのように、

仲間と…と思っている人がいたら…相手をよく確認したほうがいい…

もう一度考えを改めて頑張る方がマシだ…

じゃないと…

Cがアナタを連れていくかもしれない…

怖い話投稿:ホラーテラー Shadyさん  

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