中編3
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シュレッダー

幽霊話ではありませんので、興味のない人はスルーしてください。

同僚の晴美はシュレッダーが好きで、不要と思えばなんでもシュレッダーにかけてしまうちょっと危ない女である。

一度、主任のプレゼン用の資料をシュレッダーにかけ、大目玉をくらったにもかかわらず

その習性は直らない。

今年の1月のことだ。私は会社に忘れ物をしたので戻ってみると、晴美がいた。

「君も忘れ物か?…」と声をかけようとしたが、彼女の様子がなんだかおかしかったので、そっと隠れて様子をうかがった。

彼女はシュレッダーのそばにしゃがみ、横にあるゴミ箱の上でなにかをハサミで細かく切っている。

・・・ん?シュレッダー故障か?

よく見ると、写真のようなものを切っているのだが、晴美の顔が尋常じゃない。

どう、表現したらいいのか・・・

まるで、この世の憎しみを一手に背負っているみたいな・・ただならぬ怖い顔だった。

普段の少し天然で、明るい晴美とは別の顔を見た私は、見てはいけないものを見てしまった感じで、戻ってきたことを一瞬後悔した。

しかし、次に晴美のとった行動に僕はくぎ付けになった。

写真か何かを裁断し終えた彼女は、目の前のゴミ箱をじっと見ていたが、なかに入っていた不要な書類を手に取り、次々にシュレッダーにかけていく。

故障じゃないのに、どうしてさっきは入れなかったんだ?

彼女は空になったゴミ箱から、先ほど自分がハサミで裁断したものを出し、じっとながめている。

シュレッダーで裁断した方が、もっと細かくできるぞ..好きだろ?なにをしているんだ?

晴美は再びハサミを持ち、一度裁断したものをまた細かく切り始めた。

表情は変わらない。まるで怖い鬼か般若だ。

なんと彼女はその後も3回、同じことをくりかえしていた。

最後は、もう指先でしかつまめないぐらいの小さな紙片になっていた。

最後の紙片を自分の目の高さに持ってきて、表情は鬼の顔のまま「ニヤッ」とほほ笑んだ。

彼女は、私に気付かずに帰り支度をして帰って行った。

当然のことだが私はゴミ箱の中を確認した。

執拗なまでにハサミで裁断したものはなんだったのか?

写真じゃなかった。

ハガキ・・写真つきの年賀ハガキだった。

私は、それを確認するために壁にかけてあるホワイトボードを見た。

やっぱり・・・

ホワイトボードに飾ってあった年賀状がない。

それは、去年の春、転勤していった私の同期の森田から部署宛てに来た年賀状だった。

よく子供が小さい頃は、家族写真を年賀状に使用するが、森田からのもそれだった。

森田は妻子持ちだったが、晴美は森田に好意をもっており、彼自身それを知っていた。

私や、周りの何人かもそのことを知っていた。

しかし、二人とも間違いを犯す人間ではなかったため、何もことは起こらなかった。

晴美がいるのに、なんであいつは部署宛てにこんなものをよこすのかなあ・・

ま、なにもそんなことまで考えていないだろう・・

私だって、今日の晴美の行動を見るまでは何にも思っていなかった。

あれ以来、私は晴美に対して今まで以上にやさしくなった。

別に、彼女を哀れに思っているわけではないし、恐怖に思っているわけでもない。

恋が芽生えたわけでもない。

晴美の別の一面の心理って、男が守らなくてはいけない使命のような気がしたからである。

女の神経って男より図太いし、デリカシーがないと思っていたけど・・

晴美のしたことは女の怖い一面かもしれないが・・

違うと思う・・・うまくみんなに伝えられないけど・・

まあ、若い時の私なら、到底受け入れられない出来事ではあったが・・

男女を問わず厳しい反論があるかもしれませんが甘受します。

私の表現力の乏しさはお許しください。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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