短編2
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ほのぼの日記

目の前に女がいる。

色白の丸顔をしたこぎれいな女で、短くカットされ髪が、ダイヤの形をしたシルバーのイヤリングを際立たせている。

直子である。

直子の瞳は、山奥にある深緑に囲まれた透明度の高いみずうみを、俺に思わせる。

しばしば彼女の心情を把握しようとじっと瞳を見つめるが、そこには無機質のガラスで作られた、美しいが冷たそうな球体があるだけだ。

俺の顔が鏡のように写ってるのが見える。

彼女は、俺がわざと勧めたペスカトーレを食べている。

瑞々しいヒルのような口唇に赤いスープで濡れたパスタが吸い込まれていくのを、見たかったからである。

俺の視線が、さっきからずっと赤く染まった唇にあるのを、とうに彼女は気がついていて満足そうな笑みを俺に返している。

その時突然、「人の恐怖におののく顔は見物だ。」という霊魂の言葉が頭をよぎった。

彼女のかわいらしい顔が、恐怖でひきつるところを想像する。

すると今度はこの女を精神的にも肉体的にもズタズタに引き裂いてしまいたい衝動にかられた。

サディスティックな気持ちが俺の意識を支配しはじめる。

俺は手に持ったグラスを力いっぱい握り締めながら、なにげない微笑みを返す。

掌にはどんどん力ははいる。グラスが潰れてしまうのではないかと心配になる。

脳内物質のアドレナリンが大量に放出され、血圧が30ほど上昇する。

毛細血管は限界までひらいた。

彼女は、剥きたてのトウモロコシのような艶のある白い歯を見せて、タイガーシュリンプの頭を「ガリリ」と音をたてて噛んだ。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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