短編2
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利用者さん

私の母は介護施設で働いています。

建物はまだ新しく、不可解な噂はあまり耳にしないものの、それでもやはり人が亡くなることもあり、幽霊や怪現象は付き物だそうで。

母といっしょに働いている看護師も、手首から先だけが真夜中の廊下を物凄いスピードで這っていったり、なくなった利用者さんが突然現れたりするのを見たことがあるそうです。

しかしうちの母には全くそういった類いの物を感じ取る能力がなく、『いつか見ちゃったら嫌だなぁ』とちょっぴり怖がっていました。

さて、ここからが本題なのですが…

とある日、ある部屋で一人の利用者さん(以下Aさん)がなくなり、それを機に不思議な事が起こるようになりました。

向かいの部屋に、そのAさんらしきおばあさんが夜中にやってきたというのです。

母がそれを聞いたのは、かなり元気な方からで『確かにきた、話しかけられた』というのです。

介護施設では夜中の徘徊をする方は珍しくありません。

だから最初のうちは『だれかが徘徊してたんだろう、気づけなくて危なかったなぁ』と思っていたらしいのですが、よくよく確認してみると……

「××号室のあたりをだれか徘徊してたらしいんですよ。しかもおばあさんだって」

「……え?あの部屋の付近の女性の利用者さんは歩ける人ほとんどいないけど」

事実、歩ける方が居たことは居たのですが、目撃証言と明らかに違っていて、尚且つなくなったAさんにそっくりだったそうで。

『Aさんがきたんだ』と、とりあえずその場はまとまったそうです。

しかしその翌月。

事態は母が夜に勤務している時に起こりました。

Aさんがなくなった向かいの部屋で介助していると、しまっている扉がガタガタ……と揺れはじめました。

その時母は、『あぁ、遂に出た』と諦めにもにた覚悟をして、介助を続けました。

だんだん強くなっていく音に恐怖を感じながら下着を取り替えてあげていると、利用者さんが一言。

「今日は風が強いねぇ」

取り替え終わったあとに窓の外を見ると、物凄い嵐だったそうです。

家に帰ってきて「仕事に必死で気づかなかったよ。怖がって損した、」と笑いながら話してくれました。

後日わかったのですが、やはり目撃されたのはAさんだったとの事です。

時々、Aさんがいた部屋にあるラジカセが大音量で鳴る事があるらしい……

つまらい話にお付き合いありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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