短編2
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怪奇絵

私にはイラストレーターの友人がいる。

事務所でもある自宅で彼は仕事を

しているのだが、彼は必ず机を部屋の

真ん中に置いて作業している。

インテリア云々の話ではないらしい。

ある時何となくその理由を尋ねた私に

彼はこんな話をした。

数ヶ月前は窓際に置いて作業していた彼。

その頃は特に忙しく連日徹夜も続き、

睡眠不足の日々だったそうだ。

作業中にうっかり居眠りをしてしまう

事も結構あったらしい。

そんなことばかり繰り返す中、ある時

異変は起きた。

深夜、作業中に居眠りをしてしまった時

次に目覚めると必ず机の上に妙な絵が

置いてあるのだという。

ペンを握ったまま寝てしまうとペン先が

遊んで線を引いてしまうというのは

よく有る事だが最早そんなレベルでは

なく、乱雑なものだが確かに「何か」を

見て描いているような絵だそうだ。

最初はさほど気には求めなかったものの

そんな事が何回も続くとやはり段々

気味悪くなってくるもので、ある深夜

彼は休憩の合間にその絵をじっくり観察

してみることにした。

乱暴な線ではあるがやはりただ偶然

描いてしまったものにしては出来過ぎて

いる気もする。

色々角度を変えて見ているうちに彼は

もしかしてこれは人の顔なのではないか

と思った。そういう目で見てみると、

確かに目や鼻、口らしきものがある様に

見える。

しかし人の顔となるとこんな所に目が

あるのは変だ、鼻も歪んでいる。

きちんと画用紙を十字で区切っている

わりには妙なデッサンだなと思った時、

ふと彼は窓を見た。

そして気が付いた。

ああ、これは窓を見ながら描いたのかな。

十字線は窓の桟なのではないか…

ぼんやりと考えているうち、急に背筋に

寒いものを感じた。

待てよ…

冷えた頭で考える。

ここは2階だ。窓を見て描いたのなら

こんな所に人がいるのはおかしい。

無論ベランダ等はない。

もう一度絵に視線を戻す。

一瞬のうちに恐怖に襲われた彼は絵を

丸めて捨てようとした

その時

ガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!

驚いて顔を上げた彼の目に飛び込んで

きたのは、血塗れの顔面を窓に押し付け

ながら激しく窓を叩く女の姿だった。

そのズタズタの顔はまさに絵と

そっくりだったそうだ。

そこで気を失った彼。そして朝目覚める

と仕事そっちのけで近くのお寺に相談

しに走ったらしい。

そこで絵をお焚き上げして貰ったそうで、お寺の人にいわれた通り窓に御札と塩を

配置したらぴたりとあの絵は描かなく

なったという。

それでもなんとなく窓際に向かうのが

怖くなった彼は机を今の場所に動かして

そこで作業する事にしたそうだ。

これが理由だよ、と彼は苦笑いした。

結局あの女の正体は分からずじまい

だったらしい。

怖い話投稿:ホラーテラー 梓さん  

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