ここから見る空はホントにきれいだ。
どこまでも青く澄み渡る空は、僕の傷ついた心を癒してくれる。
山なんてあまり登ったことなかったけど、けっこういいもんだな。
ここからは街並みも見渡せる。
たいして大きな街じゃないけど、僕が生まれ育った街だ。
僕の家はどこかな…
…あのオレンジの屋根は中野の家だな。
奴には子供の頃からイジめられてた。腕っ節強かったから、よく泣かされてたなあ。中学の時は、親の金まで盗んで奴に貢いだんだ。まあ今も変わらないけどね。
…あのマンションはユミちゃんが住んでるマンションだな。
ユミちゃん優しかったな。昔から僕がイジめられてたら、よくかばってくれたっけ。でもまさか中野と付き合ってるなんて知らなかったよ。
大学も全部落っこちたし、就職先も見つからないし、何にもいいことなかったな。
あ、あれが僕の家だな。小さくてボロっちいな。親父も酒さえ飲まなきゃいい親父だったんだけどな。今どこで何してるんだろう。
…お袋心配してるかな。
…あ、あれはロープを買った量販店だ。レジのコかわいかったな。でも彼氏いるんだろうな。
…考えてみれば僕の居場所なんてどこにもなかった。…でも、ここは気にいってるよ。
風が吹くと体がブラブラ揺れてしまうのが難点だけどね。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話