短編2
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ムカデVS幽霊

私の家はさほど古い家ではないのだが湿った土地柄と今年の異常なまでの暑さで例年に比べてムカデが大量に出てきた。

もちろん駆除対策はしているが所詮素人が市販のもので対応しているから数週間で再び出現してきてしまう。

私が怒りと恐怖の最高潮に達したのはある朝方の4時30分主人の慌ただしい動きで目が覚めた。

「どうしたの?」

挙動不審の主人に訊くと

「ムカデにかまれた」と蒼白い顔で足をさすりながら逃がしたムカデを探していたが見逃した。

一応看護師の私は主人の応急処置をして夜明けまで一睡も出来なかった。

主人は気持ち良さそうに寝ている。

思いのほか傷は軽いようだ。

朝起きてきた主人に病院へ行こうと勧めたが仕事が休めない。大丈夫だと言って仕事に行ってしまった。

主人も同業者なので素人ではないから大丈夫だろうと私も楽観的に思い見送った。

この日から私の不眠が始まった。

ムカデが寝ている間に出てきたらと思ったら…

うちにはまだ小さな子供もいる。

この子がかまれたら!

私は軽いノイローゼになっていたと思う。

もちろんすぐに対応して専門業者がきてくれたのは数日経ってから。

業者の話だと今年の異常な暑さの為、虫が大量発生しており依頼が多く忙しいという事だった。

取りあえず一安心。

やっとゆっくり休める。

さてさてムカデ騒ぎで我が家が賑わっていた最中に私たちの結婚記念日の旅行の日がきた。

この子が産まれて初めての家族旅行。

私たちは海の近くのホテルを予約して一泊二日の旅行に出掛けた。

自宅ではムカデでナーバスになっていた私はやっとゆっくり眠れると早くベッドに入った。

初めてのお泊まりに興奮気味の子供と主人よりも先に寝てしまった私は夜中に目が覚めた。

時計を見ると2:22とデジタル時計が表示していた。

何だか不気味と思った私はベッドの向こうのドアの方が気になり目をやるともちろん何もない。

しばらく気になり横になっていたが眠れず何度も頭をあげて気になる方を確認していた。

そのうちウトウトしてきた時……

私の頭上に顔だけを壁から出している目を異様に見開き黒目の若い女の霊が私を凝視していた。

一瞬『怖い』と思ったが何故か不思議だがさほど怖さも感じられず私はその霊を見ていた。

だって笑っているようなその顔は怖いというより愛嬌があったから。

目が覚めたらすっかり朝だった。

夜中の霊は私の夢だったのか?

それとも本当にみたのか?

感覚がはっきりしないのだが…

ただムカデ騒ぎで不眠だったから綺麗なホテルで安心して熟睡出来たのは事実。

私にとっては霊の怖さよりムカデが怖いということかもしれない。

涼しくなりつつある今日では業者の駆除で庭には何匹か死んだムカデがいるが家の中には出てきていない。

やっぱり『餅は餅屋』ということか。

怖い話投稿:ホラーテラー ナナさん  

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