短編2
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入れない…

 

実家の母親と電話してたら、夕方を通り越し、外は暗くなる寸前になっていた。

電話を切り、慌てて家の裏の庭に干してあった洗濯物を取り込みに行った。

慌てて取り込んでいると、家の玄関側から

「ガリガリ…ガリガリガリ……ガリッ…」

と、何かを引っ掻く音がしてきた。

日が暮れる寸前の暗い中だったのもあり、引っ掻くような音が不気味で、一瞬体が固まった。

でも、家に入るには、玄関に向かうしかない。

「猫…の仕業だと思うようにしよう」

部屋の中に、子供が居る。

さっさと戻らなくてはと思い、玄関に向かった。

「ガリガリ」の正体を目の当たりにした時、戦慄が走った。

誰か居る。

玄関のドアの前に…

家の影に隠れ、玄関前に居るヤツの顔を、目を凝らしてよく見てみた。

…男だ。

「…入…なぃ……」

「はぃれない……よ…」

旦那が鍵でも忘れたのか?

とも思った。でも、体格・背丈・髪型が全く違っていた。

あれは……

2年前、私にセクハラしてきた同僚だ。

私が寿退社する前に、私への酷いセクハラが原因でクビになった、一回り年上の男。

2年前とは違い、ガリガリに痩せ、頬は痩け、目も窪んでいた。

暗がりだから、顔の凹部分が強調され、窪みが殆ど真っ黒に見える。

アイツ、私の家をどうやって知ったのか…!!

気持ち悪くて、ガクガクと震えた。

家の壁に背中を付け、息を殺した。

(早く居なくなれ…!!)

(早く居なくなれ…!!)

ガリガリ

の音がやんだ。

ソッ…と見てみると、

居なくなっていた。

居なくなったのを見計らい、走って慌てて家の中に入り、玄関に鍵を閉めた。

私と同じく、寿退社した、仲の良かった女性の元同僚に、このことを電話で愚痴った。

すると、

「あのオヤジね…クビになって直ぐ、精神的におかしくなって、今は精神病院に入院してるらしいよ」

「一時退院の時に飛び降りて、下半身不随になって、今は車椅子生活だって聞いたよ」

と 返ってきた。

じゃあ、私の家の前に来ていた男は、一体何者だったのか。

車椅子なんて使ってなかった。

まさか…。

私は、以前お世話になったお坊さんに相談し、家に来て貰った。

「…うん。近くに居ますね。生き霊です」

「ここの家、以前お払いして、札を各部屋に貼りましたよね。だから入って来れなかったのです」

 

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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