短編2
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全身火傷〜紙一重の差〜

前回の投稿『夜勤中の足音』では、『ありがち』という意見もあったので、変わった怖い話を思い出そうと思ったのですが、幽霊?が、そんなに奇抜な行為に出ることも少なく....

ということで、怪談と言うには少し違う、リアルな話を投稿したいと思います。

私はA病院に勤務する前は、かなり大きな都会の病院であるS医療センターで働いていました。

その病院は、救急専門の病院で、救急車、ドクターカー、ドクターヘリで搬送された患者のみを診療し、歩いて受診できる軽傷の患者の受け入れは行っていない、いわゆる救急救命センターでした。

なので、普通の病院では扱うことのできない重症患者のみが搬送されてきます。

ある日、近くの工事現場で爆発事故があり、爆発に巻き込まれた全身熱傷(全身の大範囲の深いやけど)の男性患者が搬送されてきました。

下からの爆風を受けたため、下半身から上半身にかけて火傷をおっていましたが、首から上は無傷で意識もはっきりしていました。

痛みはあまり感じておらず、そのことは逆に、神経深部まで火傷が到達しているという、かなり危険な状態でした。

しかし、本人の意識がはっきりとしているため、本人に生命の危険性について説明し、家族にお別れも言うことができました。

意識がはっきりしている中、奥さんや子供に遺言を伝える彼の気持ちは、図り知れない物だったことでしょう。

首から下は、火傷専用の包帯で全身を覆われてはいるものの、言葉もはっきりしており、見えているぶんには、軽傷の患者のように感じたと思います。

しかし、その後は治療の甲斐あってか、その男性は奇跡的に命を取りとめました。

それから、私が他の看護師らと、最初の処置後、初めて身体を消毒していたときのことです。

全身、頭以外は火傷のはずが、何故か陰部だけは無傷で残っていたのです。

どうやら、下着が張り付いていたために、陰部が守られた様子。

その男性も、死の次に最悪な事態を覚悟していたようですが、恐る恐る確認するも、自分の陰部を確認し、驚喜していました。

後日、男性は形成外科で皮膚を移植し、転院していきました。

もし、下着が守ってくれていなければ....?

全身火傷は、全身の何%が火傷をおっているかが、救命できるかの境目。

きっと命は助からず、助かったとしても、男性として過酷な余生が待っていたことでしょう。

まさに紙一重の差で、命と男性としての余生が守られたのです。

恐るべき下着!

布きれ一枚、侮れませんね。

怖い話投稿:ホラーテラー 看護師Kさん  

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