中編6
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8月15日

数年前の8月15日

盆休みの最終日ということもあって、俺は部屋でのんびりとくつろいでいた

15時を過ぎた頃、友人のTから電話がかかってきた

T「もしもし?ちょっと○○(某デパート)まで買い物に付き合ってや」

免停中のTは、どうやら俺を○○までの足に使いたいようだ

俺「はぁ?遠いし嫌じゃ。しかも今日は15日で?」

俺の家の近くには大きな川があり、そこで毎年8月15日に花火大会がある。今

出れば帰りに大渋滞に巻き込まれてしまう

T「まぁまぁいいじゃん。頼むよガソリンいれるけぇさ」

俺「……満タンにしろよ」

ガソリンはいれたばかりだったが、結局付き合ってやることにした

俺はTを迎えに行き、○○へ。買い物も終わり、時間は18時

俺は来た道とは別の道を帰ることにした。かなり遠回りだが、それでもこちらの

方が早いだろう

しばらく走り、車が交差点に差し掛かかった時、Tが声をかけて来た

T「なぁなぁちょい待って」

その言葉に俺はブレーキを踏む

俺「なんなぁ?」

T「あのさぁこの道真っ直ぐいったことある?」

俺「ん?いやないな」

いつもは左折だ。正面の道は山の中へと延びている

T「ちょっといってみようや。どうせガソリンは俺がいれるんじゃし」

早く帰ってもすることはないし、知らない道を探索するのは好きな方だ。俺はT

の提案に乗ることにした

そこから車を進めて30分。なにもない

ただただ山の中の道を進むだけだった。なにかを期待していたわけではなかった

が少し残念だ

T「あっ」

突然Tが声をあげる

俺「なに?」

T「横に道があったんじゃけどさぁなんか変じゃ。木で道を塞いであった。あっ

あれあれ!またあった!」

俺も左側に目をやると、木材が乱雑に積み重ねてあり、道を塞いでいる。確かに

変だ

T「あっこっちもじゃ」

これで三ヶ所。さらに次もその次も

T「なぁなぁ次あったら歩いてあの奥にいってみようや」

俺「は?いやいやめんどいし」

T「ええじゃん行こうや」

わがままなやつめ。内心そう思ったが、山の中を歩くのもまぁ悪くはないか。な

ぜかその時はそう思い、次の横道で車を止めた

俺達は木材を跨ぎ山道を歩いてのぼる。10分ほど歩くとひらけた場所に出た

そこには一軒の廃屋。周りを見渡すと、幾本もの道がここに出ている。今まで塞

いであった道は全てここに繋がっているのだろうか?

T「行ってみようや」

そう言い、Tが廃屋へと歩き出す

その時「行ってはいけない」なにかが俺にそう言ったような気がした

俺「待て!行くな!」

気が付くと俺は大声でTを呼び止めていた

T「びっくりしたぁ!なんなん?」

俺はTに駆け寄ると、腕を掴んで来た道を走り出した

T「なになに?どうしたん!?」

俺「わからん!わからんけどヤバイ気がする!」

夕日に照らされた廃屋が、俺には血に染まっているように見えた

息をきらしながら全力で走り抜け、車に飛び乗りエンジンをかけた

やたら胸騒ぎがする

このまま進むのはよくない。引き返して知っている道に出るべきだ

そう思い、俺は車をUターンさせるべくハンドルをきりながら後ろを振り返った

後ろに女がたっている。

ダメだ。アレに向かっていくわけにはいかない

俺はすぐハンドルを戻し、アクセルを踏み込んだ

T「えっ?ヤバイんなら引き返したほうが良くない?」

俺「馬鹿かお前!後ろ見んかったんか!?」

俺がそういうとTは後ろを振り返った

T「うああぁぁぁぁ!」

俺だって泣き叫びたい気分だ。そう思いルームミラーを覗く

俺「あああぁぁぁぁ!」

俺は泣き叫んだ

さっきのがすぐ後ろまで迫ってきている。さっきは髪が長かったから女だと思っ

たが、実際近くで見るとわからない

そいつには顔が無かった。いや正確には顔はある。だが、パーツが何一つないの

ミンチを顔に張り付けているようにグチャグチャ・・・

俺は視線を前に戻すと、ひたすらに前を見て車を走らせた

日も落ち、辺りはすっかり暗くなっている。さらには霧が出始め、視界はどんど

ん悪くなる

相変わらずアイツは後ろを追いかけてきていた

T「あっち!」

突然声をあげ、Tが左側を指さす。俺もその方向に目をやると少し先に灯りが見

えた

T「人がおる!あそこ行こうや!」

俺は一瞬躊躇した。今まで民家は何軒かあったが、どの家にも灯りがついていな

かった

あそこに行っても大丈夫なのだろうか?

しかし、知らない道であり、他に選択肢がない。それにどっちにしても進行方向

俺は灯りの方へと急いだ

近づいてみると、灯りの正体は人が手に持つ松明だとわかった。その人達は広場で一列

に並び、俺達を誘導していく

それはまるで、あらかじめ俺達が来るのを知っていたようだった

少し進み、丁度広場の中央に来た辺りで道を塞がれて止まる

俺達は助かったと思い、車から降りようとした。だが、周りの人達がそれを許さ

なかった

ドアを足で押さえられ、出るに出られない

混乱する俺達。すると一人の男性が「まだ出るな!外にいるぞ!」そう言った。

さらに続けて「エンジンを切ってドアにロックをかけろ!」そう言われ、俺は慌

ててエンジンを切り、ドアにロックをかけた

車を止めてから二時間ほどたった。車の周りは大勢の人達が松明を持ち取り囲ん

でいる

時折車を叩く音が聞こえ、アレが中を覗き込んでくる。俺達は下を向いて見ない

ようにしていた

恐怖と暑さで俺達は憔悴しきっている。アレはなんなのか?なぜ俺達はこんなめ

にあっているのか?この後俺達はどうなるのか?

様々な疑問が浮かんでは消えていった

それからさらに時間が過ぎ、もう時計を見る元気もなくなっていた。相変わらず車の周りで

は松明が燃えている。暑さでなにも考えられない。ただただ水が欲しかった

『おーい!もう大丈夫だ出てきてええぞ』

外から聞こえてきた声で俺達は意識を取り戻した

顔をあげると空が明るくなり始めている。外の男性の顔を確認し、這うようにし

て車の外に出ると、差し出された水を一気に飲み干す

「もう大丈夫。なんにも心配せんでええ」

疲れはて、座り込んでいる俺達に、初老の男性が優しく声をかけてくれた

「車があれじゃ走りにくいじゃろ。拭いちゃるけぇちょい待っとけよ」

そう言われ、車に目を向けて気付いた。視界の悪さは霧ではなく、ガラスについ

た無数の小さな手形だった

それをみた俺は初老の男性に疑問をぶつけてみた

俺「アレ……アレってなんじゃったんですか?しかも車に付いとんは子供の……

『お前らは知らんでええんじゃ!!』

突然の大声に、俺は思わず身をすくませる

初老の男性は後ろで大声を出した男を手で制止ながら話し始めた

「毎年アレに呼ばれるもんがおる。詳しくは知らんでええ。お前さんらはアレに

二度と関わることはないんじゃ。この道を真っ直ぐいきゃあ大きい道に出られる

。帰って忘れんさい」

そう言うと初老の男性や周りにいた人達は散り散りに皆立ち去っていった

俺「……帰るか」

俺の言葉にTは黙って頷き車に乗り込んだ

言われた通り道なりに真っ直ぐ行くとしばらくして知った道に出た

そこでTが口を開く

T「アレなんじゃったんかな?」

俺「知らん。言われた通りもう忘れようや」

T「そうじゃな……」

その後、俺達は無言のまま帰宅。シャワーを浴び、部屋で横になって俺はあることを

思い出した

ガソリン満タンにさせるの忘れた……

怖い話投稿:ホラーテラー Mさん  

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