書斎の窓に雨粒が当たり始めた。
「こんな時に・・・嫌な雨だな。」
Aがポツリともらす。
みんなが窓に視線を移す。
かすかに聞こえるおじさんとBの声・・・いや、Bの声に似ているが、もっとかすれた様な禍々しい声・・・
外は暗く雨が強さを増し、不気味にさえ感じる。
おばさんが「こんなもので良かったら・・・。」
と温かいおにぎりとお茶を出してくれた。
Aが突然「おばさん、本当にごめんなさい。」
と頭を深々とさげる。
気づくと全員がAと同じ土下座の体勢。
「あらあら、みんな、頭あげてちょうだい。」
「二人が何事もなく書斎に戻ってこられるように心で祈っていてね。」
おばさんは笑顔で書斎を出ていく。
沈黙が続く中「せっかくだから食ってよ。」とAが静かに口を開いた。
真夏だというのに肌寒さを感じていた俺は、熱いお茶で体温が戻ってくるような感覚となった。
しばらくして、おじさんが書斎の扉を開けた。
汗で衣類が所々濡れているのが分かる。
「B君はもう大丈夫だ。今は横になってるがすぐに目が覚める。そばにいてやりな。おじさんは着替えてくるから。」と扉を閉めた。
俺達はすぐにBの寝ている部屋へと急いだ。
襖を開けた瞬間、息をのんだ。
Bが座布団を枕代わりに寝ている。
畳にはおじさんが身に着けていただろう数珠らしき物がばらばらになってころがっている。
そこまでは納得できた。
「何なんだ?この臭い!」
仲間の一人が不快な表情を見せる。
まるでこの部屋で何かを燃やしたような・・・しかし辺りを見まわすが、火はもちろん煙さえ見当たらない。
誰もが黙ったままでBの寝ているそばに腰をおろす。
着替えを終えたおじさんが戻ってきた。
・・・何かが変だ。
おじさんの・・・歩き方、足取りが重いような・・・!!
Aが目を見開き「おじさん!まさか自分に!?」
と叫んだ。
全員がおじさんを見たまま言葉を失くした。
「おじさんは大丈夫だ。それにしてもナルちゃん遅いな・・・ああ雨が強いからな。手間取ってるんだろう。」
「ナルちゃんってのはおじさんの友人だ。成瀬さんといってな、熊のようにでかくて少々口が悪いぞ。」
「おじさん・・・何したの?」Aが静かな口調で尋ねる。
「そうだな、ナルちゃんが来るまで、君たちに説明しよう。」
おじさんはそう言って語り始めた。
「黒いジャケットの男は何者なの?」
「黒い?ああAにはそう見えたんだな。人によって見え方は様々だ。もとはベージュ色だったんだよ、あのジャケット。」
「ベージュ?」
「黒く見えたのは、あのジャケットが燃えたからだろう。」
「ジャケットが燃えたって・・・どういう事?」
怖い話投稿:ホラーテラー たかしょうさん
作者怖話