ビデオテープに映っていたもの

中編3
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ビデオテープに映っていたもの

実家へ久々に帰省した時、以前に自室にしてた部屋に泊まった。

地元の旧友とかと飲んだりした後は、特にこれといって用事もなく

実家に住んでいた10年位前まで、時々録り溜めていた映画などのビデオテープを取り出して観てみた。

ビデオテープの整理がいい加減だったので、タイトルにシール貼って内容の記載しているものなんか殆どなし。

内容を観ないと、何が録画されているか判らない状態だった。

記憶とは不思議なもので、普段は完全に忘れていたように思っていても

いざ画面に再生してみると、何となく観たような記憶が蘇ってきて

たいていのテープは、再生して数秒くらいで

(あーこれ観たわ)と停止、

次のテープに交換と繰り返していた。

夜中の2時頃、もう何本目か忘れたけど、

(あれ?こんなの録画した事あったっけ?)

見覚えのない映像の録画されたテープに突き当たった。

内容もよくわからない。

画面全体的に暗くて、映っているものが判別難しいし、

おまけに、何重にも上書きダビングしたような酷い画質と音声。

ボリュームを上げてみた。

「おーい…おーい…」

呼びかけるような声が聞こえる。

画面の奥には、何か動いているように見えるが、それが何かわからない。

更にボリュームを上げて、耳を集中してみた。

「おーい…カワカミ…」

なぜか俺の名前を言っているように聞こえる。

ここで気付いたが、声は4年前に自殺した友人Fに似ている。

友人Fは上京した後、しばらくは俺と会って遊んでいたのだが、家庭の事情やらで会社を辞めて帰郷。

地元の繊維工場で契約社員を少しした後、いつの間にか連絡が途絶え、四国の神社の裏山で首を吊っていたらしい。

後で元同級生からその事を聞いて、驚いた記憶がある。

でもなぜビデオに?空耳?

「カワカミ…ここは寒い…」

やはり俺の名前を言っている。

口調も何かやけに苦しそうだ。

気味が悪いので停止ボタンを押そうとした時、キュルルルルーと変な音がして、画面に何も映らなくなった。

取り出しボタンを押しても反応なし。

取り出し口を指でこじ開けて中を見ると、テープが絡まってしまっていた。

しょうがないので、箸を突っ込んでテープをほじくり出してハサミで切り、無理矢理テープを取り出した。

その日はもう他のビデオを観る気が起きず、そのまま寝てしまったが、

後日、別な知人と会ったときに妙な話を聞いた。

友人Fはプライドの高い奴で、職場でうまく他の人とやっていけず、ストレスが溜まっていたらしい。

帰省した後の工場勤務でも、やはりうまくいってなかった様子で、だんだん欠勤が増えて部屋に閉じこもるようになったとか。

何をしていたかは詳細不明だが、自分の姿を自分で録画して、ひたすら録画テープを増やしていたらしい。

まわりに言った話によれば、その理由は、自分の姿を撮すことで人生を記録したい思いがあったようである。

四国で自殺死体となって見つかった時、友人Fの足下にはビデオカメラがあったという事であるが、

死ぬ間際、そのカメラに何が録画されていたのかは判らない。

もちろん、友人Fの家族にそんな事を聞けるわけもない。

こんな背景を考えると、あの部屋で見たビデオテープは、何か俺に語りかけたかったのだろうか。

テープの絡ったタイミングが妙に良すぎるのは、これ以上テープの内容を見てはいけないという、友人Fからの意志だったのか。

テープはどうにもならないので、見た翌日には捨ててしまったし、今となっては何も判らない。

怖い話投稿:ホラーテラー 川上(仮名)さん  

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