中編3
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不眠症?

こぴぺ

 昨夜(正確には今日の午前二時から五時の間)の出来事です。在り来たりな、特に何が有る訳でもない話です。寧ろ、ただの夢で有ったかも知れません。

 私は睡眠障害が有りまして、所謂『不眠症』と言う奴です。薬の名前は伏せて置きますが、日本では一般的に不眠症の治療に使われている薬を(少量ですが)服用しています。しかし、その薬を使っても睡眠時間は三時間から四時間です。薬の作用時間が八時間から十時間なので、その後も眠気は続きますが、眠る事が出来ない日が多いのです。

 昨夜もそうでした。眠剤を服用したのが九時半、眠りに付いたのだ十時と仮定して、目が覚めて時計を見たのが二時過ぎでした。いつものパターンです。このまま横になって眠気を引きずったまま、三時間から四時間を横になったまま過ごすのです。正直に申し上げると、この数時間は苦痛です。再び眠ろうにも眠れないのですから。

 私は、いつもの事、横になって休んでいるだけでも体は休まる、と自分に言い聞かせながら、しかし、ほんの僅かな可能性に懸けて再び眠ろうと試みました。

 どの位の時間が経ったのでしょうか。日中なら私の体内時計は正確な方なので、大まかな時間は分かるのですが、眠剤がまだ作用しているせいか、私はどの位の時間が経過しているのか、検討も付きません。眠っている様な、起きている様な、あやふやな時間だけが私の頭の中を流れて行くだけです。

 私は普段は横向きで、胎児の様に丸まって眠るので昨夜もその姿勢で眠っていました。その筈でした。しかし私は気づくと、俯せになって寝ていました。その時は、どうせ寝返りでも打ったのだろうと思いましたが、どうもおかしいのです。

 私の背中の上に何かが乗っているのです。その乗っている何かは、私の背中に正座していて、お婆さんだと言う事が解りました。当然、俯せの私には背中の上に乗っている人物の姿は見えない筈なのに、姿が頭にはっきりと浮かぶのです。

 彼女は年齢は正確には解らないがお婆さんで有る、紺色の生地に白い縦縞の留め袖の様な着物を身に付けて、半分以上が白くなっている髪の毛をキチンと結い、無表情に私を見ている、見ず知らずの老人で有る、と解りました。

 私は、立ち去れ、立ち去れ、と心の中で繰り返しました。その思いが通じたのか、お婆さんはいつしか消えていました。

 しかし、次は黒い影の様な、霧の様な何かが私の上を舞っているのです。お婆さんの時と同様に俯せで寝ていた私には、それを見る事は出来ませんでしたが、頭にはっきりと浮かびました。黒くて、霧の様な何かが私の上を舞っている。

 私は、このままでは目覚めが悪いと思い、昼間にユーチューブで見た好きなミュージシャンのライブ映像を頭に思い浮かべました。心地好い音楽が頭の中で流れて行きます。それでも黒い霧は晴れませんでした。しかし私は、ライブ映像を思い浮かべる事に専念しました。

 どの位の時間が経過したのでしょうか。私は横向きで胎児の姿勢で気が付きました。眠剤の作用は大分弱まり、頭もハッキリとしています。時計を見ると、五時半でした。目覚ましをセットした時間にはまだ三十分余裕が有ります。また、目覚ましより早く目を覚ました様です。もう朝と言っても良い時間だと割り切っり、仰向けになった私は、背伸びをする様に体を伸ばしました。そろそろ起きよう、と。

 あのお婆さんと黒い霧は夢だったのか、いつか読んだ事の有る怪談を思い出したのか、それは解りません。幽霊? 私は幽霊など信じていませんので、それは否定します。だって幽霊が居たら怖いですから。

 ただ、私の希望としては夢で有って欲しいです。だってその時間は眠れていた、つまり、不眠症が改善に向かっている、と思えるからです。

 つまらない話を失礼しました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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