中編3
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彼岸花

暑さ寒さも彼岸まで…なんて言葉が似合う時期。

昼メシを一緒した小学校からのツレの『健』と、暇つぶしにあてもなくいつものようにドライブ。

大きい道から外れ、山方面に向かう道を選んだのが間違いだったのか、完璧に迷ってしまっていた。

健「迷っても日本の上だから。」

いつも気楽な健の言葉が少しの安心といっぱいの不安でしかたがない。

いつの間にか木々が覆い茂る山の中、ぐにゃりぐにゃりとした道をノッタラノッタラ走っていた。

視界が開け、山あいの開けた場所に出たとき、街とはいえないが小さい集落が見えた。

地名を示す看板が見えたから地図で探してみるが、集落が小さい為か、地図にも載っていなくて余計に不安になる。

健「あれ…何だ?」

健が指し示す方…幅が2m程の小川を挟んだ向こう側、少し小高い丘の上に緑に混じって赤い何かが見えた。

小川に架かる小さい橋を渡り、赤い丘方面に向かってゆっくり走っていった。

丘までの道の途中で『これ以上は行けないなぁ…。』と思い、車を降りて歩いて登る。

丘を登りきり目の前の光景に言葉を失った。

一面が『彼岸花』で埋め尽くされていた!

思わずテンションがあがる。

むせかえるような彼岸花の香りが鼻をつき、頭がクラクラする。

花を踏まないように足を踏み入れ進んでいくと、なにやら遥か前方の靄がかった中から誰かが呼んでいるような気がした。

なんとなく懐かしいような、聞き覚えのある声に向かって行こうとした時、「おいっ!!」という言葉で我にかえった。

振り向くと憮然とした態度の健が、彼岸花の群生の縁で立っていた。

健「ドコ行くつもりだよ…。」

俺「いや…声が聞こえたから。」

健「俺も聞こえた…うちの死んだ爺様の声だろ?『くるなー』って言ってなかったか?」

健の言葉に思わずゾクリとした。

ガキの頃、健の家に遊びに行くたび、にこにこしながらお菓子なんかをくれた、健の爺様の声を思いだした。

健「帰ろーや。ここはなんとなく来ちゃいけない場所のような気がしてきた。帰りは俺が運転するわ。」

俺「…頼むわ。」

ボーっとする頭で助手席に乗り込み、健にキーを渡しシートに体を沈ませた。

来た時の道を帰らずに先に続く道を走っていく。木々に囲まれたグニャグニャ道を進んでいき、辺りが少し暗くなってきた頃、ボーっとしてた頭もマシになってきた。

同じ山道だが少し広めの道路に出た時、地名の看板があったから地図で確認する。

なんだ…意外と近くじゃないか。

俺はナビしながら、さっきから気になる事を聞いてみた。

俺「さっき『来ちゃいけない場所』って言ったろ?」

健「ああ…どーみてもおかしいトコだったから。」

健が言うには…全国的に彼岸花の群生地ってのは珍しくないが、あそこは俺ら以外に人がいなかった。あれだけの彼岸花の群生地なら見物客がいてもおかしくないのに…。しかも小さくても集落があるのに、人の気配が全くなかった…という。

なるほど…そう言われればたしかにそうだったな…と変に納得した。

健「それに彼岸花のあった地名な…看板見たはずなのに、どーしても思い出せない。」

俺「えっと…たしか…。」

どういう事か俺も思い出せなかった。看板見て地図で確認しようとしたはずなのに…。

健「マンジュシャゲ。」

俺「あ?」

健「彼岸花の別名だよ…『曼珠沙華』ってんだ。たしか『天上の華』って意味だったかな?あそこは極楽だったのかねぇ。だったら安心だ…爺様いいトコ逝ったな。」

俺「まじか!?もしかしたら俺ももうちょっとで極楽に連れていかれてたのか。」

健「まあ、色々異名があるみたいだけどな…『地獄花』とか…。」

俺が地獄行きなら、もっと罰当たりな健はドコいくんだ…そんな事思ったが、今日は言わずにおこう。

今回はなんとなくコイツに助けられた気がしたから…。

後にも先にもあんなトコに行ったのはこの時だけだから、結局ドコに行ったのか分からず終い。

申し訳ない……怖い体験じゃなく不思議な体験でしたね。あとがきにてお詫び致します。

あと何故か私のコメント欄は下ネタ方面に…Orz

狙ってる訳じゃないのに残念です。

ナニか憑いてんですかねぇ…?

怖い話投稿:ホラーテラー 八百草さん  

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