中編5
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交差点

初投稿です。未熟ですがよろしくお願いします。

この頃よく同じ夢を見る。

雨が降る中、傘を手に持っているにも関わらずびしょ濡れになりながら走り続ける自分の姿。いや、自分では無い。服が違う。

大粒の雨が目に入って鬱陶しいが、そんな事をものともせずにあの場所に向かう。

徐々に交差点の向こう側にしゃがんでいる いつもの 少女が見えてきた。

ああそうだ。俺は知っている。この夢の結末を。

毎回の様に俺は彼女に向けて大きく手を振り、彼女も気付いた様でこちらに走ってくる。雨を気にせず、俺と同じ様に。

そして横断歩道の真ん中に来て、

パパパァーッ───ドガッ!!

いつもの様に大型トラックに撥ね飛ばされた。

呆然と立ち尽くす俺に、ゆっくりとした口調で話し掛けてくる女の声が聞こえる。

『やっと来てくれた』

「──くそっ!!」

「うおっ──ってぇ!!」

勢い良く起き上がった俺の頭と何かがぶつかり、鈍い音が響き渡る。頭がカチ割られたかの様に痛い。

額をさすりながら目を開けると、同じ様に額を押さえて唸っている男の姿があった。

「いってぇな…何しやがんだK!(俺の名前)」

「知るか。つーか何でお前がここにいんだよ?しかもデコぶつかる距離ってお前…」

そこにいたのは友人のD。良く馬鹿をやる仲で、ハイテンションだけど基本的にいい奴だ。

まだ額をさすりながらも、真剣な表情になって俺に話し掛ける。

「また、あの夢か?」

「ああ……ったく、寝不足で頭がおかしくなりそうだ……」

その場ではそれ以上Dには何も言わず、俺は昼寝していた屋上から立ち去った。

夢を見始めたのは1ヶ月前。キッカケはあの交差点を通った時に、あの時の子を一瞬見たんだ。

返り血を浴びたワンピースを着てて、でもその表情は悲しそうに見えた。一瞬見ただけでも分かるくらいに。

でもヤバいのは、最近は夢を見るだけじゃなくて魘される様にまでなってきてるんだ。何でかは分かんない。きっとDもそれで心配してんだろう。

そんな事を考えながら、俺はあの交差点で信号待ち。別に怖いなんて思わない。幽霊なんて見たこと無かったし、例え見えたりしても俺には何の関係も無いんだから。

そうすると、大型トラックが通りすぎた瞬間だった。確かにいた。あの子だ。まだ、悲しそうにこっちを見ている。

俺は自然と足を踏み出した。赤信号にも関わらず、あの子を見つめたまま。

意識が彼女に集中している内、遠くにクラクションの音が聞こえる。

ただ、ぶつかる事は無かった。まるで俺は念力よろしく後方に吹き飛ばされ、特撮顔負けに電柱に激突。ぶつかる寸前にスピードは落ちてたみたいで大きな怪我は無かったが、俺の頭にはそんな事などこれっぽっちも入っていなかった。

ただ、飛ばされる寸前に聞こえた

『来たら駄目!』

という、か細いながらもしっかりとした声が脳内に響いていた……。

時計は午後11時28分をさしている。俺はベッドに転がり、ろくな1日じゃなかったと愚痴を溢した。

結局あれからは車に乗っていた運転手に怒鳴られ、肩を竦めながら帰っただけ。相手の運転手も俺の不可思議な行動に首を傾げていたが。

とにかくさんざんな日だった。疲れた。今日はもう寝よう。

そう呟き、俺の意識は闇に沈んでいった。

またこの夢か。

そう思うことは無かった。

何故なら、今までとはまったく状況が違った。俺はあの交差点で、傘をさして彼女が待っていた場所の前にいた。雨がしとしとと降り、あまり好みでは無い天気だ。

そして視線の斜め下には、あの子がしゃがんでいた。俯いている。見るからに元気が無いのは分かる。

俺は自然に、ごく自然に声を掛けた。

『どうしたんだ?誰か…待ってるのか?』

静かに尋ねた俺の言葉にほんの僅かに反応し、顔を上にあげる。

こんな状況で不謹慎だが、すごく可愛かった。ただ、その可愛いハズの笑顔は見れず、あの時と同じ様に悲しそうな表情をしている。

『うん…大切な人、なんだけどね』

『それは俺にも分かる。あんたは…自分がどういう存在か、分かってるのか?』

きつい聞き方をしてしまった。慌てて『悪い。変な事聞いて…』と謝る。すると彼女も大丈夫だよ、と呟き、俯いたままの状態で話し始めた。

彼女の名前はM。一年前にこの世の存在で無くなったことは理解しているらしく、初めは自分が見えた俺に大層驚いていたらしい。

彼女がここにいる理由。それは、大切な人を待ち続けているから。俺とそっくり、瓜二つの別人を。

あの日、Mは約束をしていた。しかし相手は待っても来ない。雨も止まず、もう帰ろうかなと思った矢先に彼の走っている姿が見えた。

笑顔で走りながら、青信号になっている横断歩道を走り抜ける。ハズだった。

彼女は信号無視した大型トラックに撥ね飛ばされてしまう。即死状態。相手も目の前でこんな事があっては正気でいられるハズが無く、涙を流しながら彼女に走り寄った。

それから彼女は、一連の下りを経て今の様な存在となった。しかし何故なのか、人に害をもたらす存在にはならず、ずっとこの場所で彼を待ち続けていた。

そして偶然自分が見える俺に、何とかして助けを求めようとしたのだ。

『ごめんなさい…勝手な事言って、貴方に迷惑かけちゃって』

『まったくだよ。おかげでこっちはノイローゼになりかけたんだ』

『本当にごめん…もう、私を見なくていいから。私もそろそろ逝かなくちゃ…』

『待て』

『えっ?』

悲しげな表情のままそう呟いた彼女に口を挟んだのは俺。

『あと一週間だ。一週間、待ってみろよ』

『……うん、そうだね。最後、だから…』

本当はしてはいけない提案だった。死を迎えた者はその世界に行かなければならない。この世界にいてはならない存在。

んなもん知るか。だな。

「で、そのユーレイさんのお手伝いに俺をコキ使ったってワケかい、幽体離脱を体験した親友よ?」

「ああ、分かってるじゃねぇか」

「後でラーメン奢れ、じゃなきゃあお前をここでそのユーレイと同居させてやんよ」

「……来た来た。こっちでーす!」

Dの言葉をさらりと受け流した俺の視線の先には、もう一人の俺…では無く、Mの相手がいた。本当に俺そっくり。鏡よりこっちのが正確そうだ。

その男、Jは眉をひそめながら俺達二人を見る。そして、俺達の後ろに置かれた花を。

「何で僕をこの場所に……?」

「あの店です。あのシャッターが降りている店……見えますか?」

「……!!」

見れば、Mがこちらに手を振っている。苦笑いしながら、大きく手を。

それが見えたのかどうかは分からない。ただ、Jは大粒の涙を溢し、その店に歩いていった。手に、小さな箱を持って。

俺が知ってるのはここまで。Jの背中を見送って、俺とDは帰った。チャーシューメン特盛とかまじで聞いてない。

そして、あの夢は見なくなった。代わりに、現実のあの交差点では、Jが度々あの店の前にいる。Nの姿はもう俺には見えなくなったけど、今はいるのかどうか分からない。

それでも最後にNが笑っていたから、良かったんじゃないかな、と俺は思ってる。

終わり。

怖い話投稿:ホラーテラー 会長もどきさん  

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