私はナニモノかに追いかけられていた。
「殺される!」
暗闇の中、月明かりのみを頼りに、草を掻き分け走り続けていた。
息も絶え絶え…奴との距離はどんどん縮んでゆく。
(…ダメだ……)
(もうダメだ!!!!)
突然、奴は私に向かって飛びかかってきた。ナニモノかの下敷きになる私。
奴の容姿は、月明かりだけでは足りず、黒い影にしか見えなかった。
私は必死に抵抗した。
力では勝てないと分かり、私は奴の右耳に思いっきり噛みついた。
「ンギャァァァァァァァッ!!!!」
あまりの痛さか、つんざく悲鳴…
この生半可な攻撃が逆効果だった。
奴からの猛反撃が始まった。
奴は仕返しに、私の顔に思いっきりカジりついてきた。私もあまりの痛さに、奴と同じような悲鳴を上げた。
奴は、私の左目の下マツゲあたりから上頬にかけ、カジりついたまま離れない。
離れないどころか、そのまま食いちぎる勢いだった。
そしてとうとう、私の左頬を引きちぎった!!
「ギャァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
気が狂いそうな程の痛み!
ほとばしる、飛び散る血飛沫…
痛みと血飛沫に気を取られていると、またもや奴は噛みついてきた!!今度は左眉からオデコあたりである。
引き離そうと抵抗するも無駄。
また私は血肉をもっていかれた。
…ここで、目が覚める。
私は夢を見ていたようだ。
額は汗びっしょり。
時刻は深夜2時を過ぎた頃。
「寝始めてから、まだ2時間しか経ってないじゃないか…」
二度寝しようとしたが、夢で見た左頬が、リアルにチクチクと痛くて、なかなか眠れなかった。
… 朝
リビング
夢の正体が、なんとなく分かった。
生後1ヶ月頃から同じケージに入れて育てていた、オスの2匹のハムスターの片方。
顔が、左半分無くなっていた。
頭蓋骨~顔にかけ、骨が見えるくらいに食い千切られていて、ケージの中は血まみれ
夢の中の風景は、多分…
「月」は保安灯(豆電球)
「草」は敷き藁とハーブ
何かの弾みで喧嘩になり、止まらなくなったんだろう。私に自分の危機を伝えたかったのかもしれない。
私が夢から覚めた時、もう死んでいたのだろうか…それは分からない。
もう一匹は、いつも通り暢気に餌箱をガサガサしていたが、右耳が…少し欠けていた
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話