短編2
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共喰い

 

私はナニモノかに追いかけられていた。

「殺される!」

暗闇の中、月明かりのみを頼りに、草を掻き分け走り続けていた。

息も絶え絶え…奴との距離はどんどん縮んでゆく。

(…ダメだ……)

(もうダメだ!!!!)

突然、奴は私に向かって飛びかかってきた。ナニモノかの下敷きになる私。

奴の容姿は、月明かりだけでは足りず、黒い影にしか見えなかった。

私は必死に抵抗した。

力では勝てないと分かり、私は奴の右耳に思いっきり噛みついた。

「ンギャァァァァァァァッ!!!!」

あまりの痛さか、つんざく悲鳴…

この生半可な攻撃が逆効果だった。

奴からの猛反撃が始まった。

奴は仕返しに、私の顔に思いっきりカジりついてきた。私もあまりの痛さに、奴と同じような悲鳴を上げた。

奴は、私の左目の下マツゲあたりから上頬にかけ、カジりついたまま離れない。

離れないどころか、そのまま食いちぎる勢いだった。

そしてとうとう、私の左頬を引きちぎった!!

「ギャァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

気が狂いそうな程の痛み!

ほとばしる、飛び散る血飛沫…

痛みと血飛沫に気を取られていると、またもや奴は噛みついてきた!!今度は左眉からオデコあたりである。

引き離そうと抵抗するも無駄。

また私は血肉をもっていかれた。

…ここで、目が覚める。

私は夢を見ていたようだ。

額は汗びっしょり。

時刻は深夜2時を過ぎた頃。

「寝始めてから、まだ2時間しか経ってないじゃないか…」

二度寝しようとしたが、夢で見た左頬が、リアルにチクチクと痛くて、なかなか眠れなかった。

… 朝

リビング

夢の正体が、なんとなく分かった。

生後1ヶ月頃から同じケージに入れて育てていた、オスの2匹のハムスターの片方。

顔が、左半分無くなっていた。

頭蓋骨~顔にかけ、骨が見えるくらいに食い千切られていて、ケージの中は血まみれ

夢の中の風景は、多分…

「月」は保安灯(豆電球)

「草」は敷き藁とハーブ

何かの弾みで喧嘩になり、止まらなくなったんだろう。私に自分の危機を伝えたかったのかもしれない。

私が夢から覚めた時、もう死んでいたのだろうか…それは分からない。 

もう一匹は、いつも通り暢気に餌箱をガサガサしていたが、右耳が…少し欠けていた

 

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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