ばあちゃんの掛け軸 (2)

短編2
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ばあちゃんの掛け軸 (2)

前に投稿したばあちゃんの掛け軸に関しての話です。

怖くない話なので興味ない方はスルーお願いします。

昔の話ですが、大地震の後に東北の海岸で大きな津波が押し寄せたことがあった。

酷い惨状で、湾の対岸から家財や死体(人や家畜も)が向かい側の海岸へ帯状に大量に押し寄せ、流れ着いた地域があった。

しばらくして、その地域のある人からあるものの引取を頼まれた。

それはひな人形くらいの大きさの木彫りの両手の無い座った僧侶の仏像みたいな置物。

その像は津波で海岸に流れついたもの。

誰が祀っていたのかわからないが、拾って持ち帰ると夜中に歩き回ったり、お経を唱えたりして不気味な現象をたびたび起こすから、神がかりする曾祖母の所へ持ってきたそうだ。

曾祖母は引き取った。

そして、津波の犠牲者を供養のため、曾祖母はある経文を掛け軸にして、僧侶の像と一緒に仏壇に置いたそうだ。

(たくさんの魂達を極楽へ導くための柱になる内容)

今でも実家の仏壇には向かって右側がご先祖様、左側に掛け軸と僧侶の像と無縁仏様が祀られている。

曾祖母が他界した後、実家から曾祖母を盲信する信者が僧侶の像を別の場所に持って行った。

しかし、いつの間にか定位置の実家仏壇へ戻って来るので、じいちゃんは話し合いそのまま実家の仏壇に置くことにしたらしい。

そういう経緯はその時は全然知らなかった。

ある日、普通の生活を送る家族に不思議な事が起きた。

家族が同じ日に僧侶の像の夢を見た。

俺とオヤジさんとじいちゃんは「両手が欲しい」と、お袋さんと妹は「座布団が欲しい」と僧侶が腰を低くし何度も繰り返し要望する夢。

家族全員でこんなの初めてだと驚いた。

ですが、不思議と僧侶の像が怖いと感じた家族はいなかった。

僧侶はナツメの木で作ること、両手の指の形や持ち物なども指定した。座布団の色や座布団の角に付ける房飾りの色合いまでも細かく指定した。

まるで家族で使命感を持ち、やらなきゃいけない夏休みの最終日の工作の勢いで、夢で見た聞いた事を要望どうりに1日で用意して作り祀った。

その後はお礼の夢とかは見なかった。

そして数年後、じいちゃんは予感してか、新品の下着と寝間着を前日に着て朝方にあちら側へ旅立った。

僧侶の像を見るとじいちゃんを思い出す。

じいちゃんの戒名は春の山で踊る男。

酒とタバコが好きでと宴会芸とお喋りとお笑い大好きだったから納得した。

怖い話投稿:ホラーテラー 十六夜さん  

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