中編4
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暗闇と静寂と音と。

怖くないと思いますが暇つぶしにでもどうぞ。

大学に入って2回目の秋。

当時、いや今もだがオカルトと言うジャンルに興味を注いでた私だが、今は当時よりも少々弱いものになってしまった。全ては「ソレ」のせいだ。

当時、よく遊んでいた友達Tとは夜中にドライブや心霊スポット巡りをしたりと学生らしい生活を日々繰り返していた。

そんな折、Tが私に持ち掛けた話はこんなものだった。

「タイムトンネル」

それはもう興味津々にその話に聴き入った。

内容としてはこんな物だった。

「自分が生まれる何年も前のことなんだが、近所にトンネルがあって普段は使われていないんだ。でもそこを通った女性が神隠しにあったらしい。」

「ありがちな話だな。」

私はそう返事をした。

人気のないトンネル、神隠し。確かによく聞く都市伝説のような設定じゃないか。しかし、私の興味はタイムトンネルに釘付け。

結局、話の流れから現場に向かうことになった。トンネルの前に立つと秋の夜だからだろうか、思った以上に寒かった。

トンネルは不気味に口を開け、まるでそこから息を吸っているかのように空気の流れができている。その不気味さは異常としか言いようがない。ライトもなく暗い為に出口さえも見えない。空気の流れさえも中に誘い込むかのように吸い込まれる。例えるならブラックホール。

その不気味な雰囲気にのまれ思わず息が詰まる。もし自分が神隠しにあったら…そんな想像が容易にできてしまう。

「通るのか?」

口をついて出た言葉。正直怖じけづきそうになっていた。その雰囲気に完全にのまれる前に何かしらの行動を起こしたかった。

「そんなこと聞くなんて珍しいな。」

今まで心霊スポットは何箇所も回った。しかしここは格が違う。直感でそう思った。

「通るさ、そりゃ来たんだし。」

そう言いながら足を踏み出した。トンネル内に入る。

静寂

夜中だからだろうが、トンネルの中はまるで自分達の存在しか認めない世界のように静かだった。靴音、水滴が地に落ちる音、私達の息遣い。

暗闇の静寂がこんなに恐ろしいものとは思わなかった。そう思いながら歩を進める。

違和感

何かを感じとったのは自分だけではなかったみたいだ。私達の頼りは携帯の明かりのみ。微々たる光。そんなこともあり年甲斐もなく手を繋いで歩を進めていた。

自分達の靴音だけだと思っていたが、二人が同時に止まった瞬間に音が一つ。二人で歩いていたのだから初めはなにも感じなかった。何回か試すがやはり多い。

自分達以外の靴音。

凍り付く体温。

その瞬間、また別の音。

今度は靴ではない。

「ふふ。」

短いがしっかりと耳に届いた女の笑い声。

二人の緊張が恐怖に変わった。

「引き返そう!」

歩いたのは大体30m。暗いとは言え走ればすぐ出口だ。

振り返り、走り出そうとした時、足に違和感を感じる。足に何かが巻き付いている。しっかりとしたものではない。蜘蛛の巣を太くしたような。

気にせず走ろうとした時だった。その何かが足をひっぱった。今度はしっかりと力が篭っている。転んでしまった。俯せになっている自分の耳元に息遣い。気が狂いそうだった。しかし声がでない。Tはもういない。

「…たの?」

恐怖と緊張のためか薄れている意識の中に流れ込んでくる声。しかし今度は確かに聞こえた。

「助けに来てくれたの?」

寝ていたのか?

しかし私は立って、ただトンネルの中を見つめていた。トンネルに女性が入って行く。それと時間差で一人の男が走ってトンネルの中へ入って行った。次の瞬間、トンネルから小玉してくる悲鳴。徐々に短く、小さくなって行った。私は動けずただ立っているしかなかった。目の前が暗くなる。

私はまた真っ暗なトンネルの中で倒れていた。夢だったのか?しかしはっきりと覚えている。足を掴む何かはなくなっていた。しかし自分の目線の一番端に白い影が見える。しかし全体は見えない。目の端にぼんやりと不明瞭なもの。視線を移してもその影は消えずについて来る。

とりあえず逃げなくては。

そう思い走りだす。出口まではあっという間だった。出口では友達が涙目。車に乗り込みその日は各自帰宅した。

次の日、再び集まり昨晩の事を話した。Tは私が転んだ際に足に巻き付く手を見て、逃げてしまったらしい。そして出口でどうしようと思っていたらすぐに出てきたと言う。ということは私が寝ていたのはかなりな短時間ということだ。

私は未だに写っている影が気になりトンネルのすぐ側にある寺へ話を聞きに行った。

住職は話を聞くと意外な話をしてくれた。例の神隠しの件だ。

神隠しと騒がれたのは実は拉致事件だった。当時の地元の人達は知っていたらしい。そして寺の住職がトンネルに行った時、自分にはどうしようもないと感じトンネルには近づいてはいけない。神隠しに会うと語り継ぐことにした。

さらにトンネルで拉致された時にはすでに殺されていたこと、その怨念が残っていて自分にはどうしようもなかったことを教えてくれた。

影の話や夢の話もしたが、それについては解りかねるらしく、他の寺を紹介してくれた。

そこでは夢はその殺された現場の記憶が何らかの力で流れ込んだこと。その女性と波長が合うこと。影は女性の霊らしいが悪意がなく、むしろ感謝しているらしい。言って見れば守護霊のような存在になっているらしい。

女性の霊はトンネルからでられず、見つけてもらえないことが哀しく成仏できなかったそうだ。

その影は今も私の視界の傍らにいる。不思議と何年も大きな怪我や病気をしていない。

怖い話投稿:ホラーテラー とろまめさん  

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