中編4
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愚哀物語

あるところにある国があった。

その国の王はとても臆病だった。なので国民全員が反乱を起こして来るのではないかと心配していた。

そこで王は考えた。

「反乱分子を減らせば良いんだ!」

本来ならそこで国民の気を引く法を出すのが、王という者だが、その王はあろうことかとんでもない法を出してしまった。

「一定期間、国民は王と王宮に勤める者以外の国民を殺しても罪にはならない。」

この話は、愚かで哀れな王が出した法に翻弄される愚かで哀れな人の話である。

「なあ聞いたか?王様が人殺ししても罪にならねぇっつう法出したらしいぜ。」

「マジか!?また物騒な時代に逆戻りか?」

(ふん。下らない。)

この会話を聞いて、こんな事を思った男はリチである。リチはつい最近まで王宮で兵隊の役職をやっていたが、クビになってしまった。

(どうせなら王宮の奴を殺せれば良いのに。)

その時、新聞を持った女がやって来た。この女の名はムーナ。ムーナはリチの幼なじみで、二日前に職を失い、ここにやって来た。

ム「ねえ。この記事見て!王様がこんな法出したってね!」

リ「さっきのおっさんもそんな会話してたな。」

ム「怖くなるね」

リ「まあこんなホームレスなんて襲う奴いるかよ。皆金持ちを狙うだろ。」

ム「ふーん。…てことは私達チャンスじゃない?」

リ「は?」

ム「私達がお金持ちを襲えばお金もらえるんでしょ?」

(可愛い顔して恐ろしい事を言うな。)

リ「でも俺らは武器もなにもないだろ?」

ム「武器ならタムがこん棒もってるよ?」

リ「貸してくれるのか?」

ム「鈍いなぁリチは………タムを殺すんだよ………」

「!!」

正直人殺しなどしたくない。でも暮らして行くには仕方がないことなのか。そんな思いでムーナを見ると、ムーナは不気味な笑みを浮かべていた。

その夜計画は実行された。意外と簡単だった。寝ているタムのこん棒を奪い、奪ったこん棒でタムの頭を殴る。

タムは簡単に死んだ。殺す事で気が狂いそうにもなったが、これで楽しい生活への第一歩となるならと思って楽になり、快感さえも覚えた。

殺しを覚えたリチとムーナはもう止められなかった。

次のターゲットは酔っ払いのおっさん。これもまた簡単だ。後ろから殴れば上手く行く。そんな事を繰り返して二人は大金を手に入れた。

そこで終われば良いものも、二人は欲を覚えた。

「もっと人を殺したい。」

もう金などにはほとんど興味が無かったのだろう。人を殺しては喜び、また人を殺してはまた喜び、狂ったように同じ毎日を繰り返して行った。

でも、そんな頃だっただろうか?リチが変な夢を見始めてうなされ始めたのは。

「……ナゼ?ナゼコロシタノ?」

「おれダヨたむダヨ!ナンデナンデ?」

「おれタダヨッテタダケナノニ?」

「フザケルナヨ?ボクノジンセイカエセヨ?」

「ナンデナンデカエセカエセおれダヨおれダヨナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタダヨダヨダヨダヨダヨダヨダヨダヨダヨダヨダヨダヨダヨダヨ」

リ「うわぁぁぁぁぁ!」

どうやら目は覚めたようだ…でもまだ狂ったような声は頭の中に鳴り響いている。

ム「大丈夫?だいぶうなされてたよ?」

リ「あ、ああ」

(なんでこんなにうなされなければならないんだ?…そうか、俺が人を殺したからか…なんで人を殺そうとしたんだ?…そうか、王様が人を殺しても良いって言ったから生活を楽にするために…なんで生活が苦しかったんだ?…そうか王様が俺を捨てたから…王様が憎い…王が憎い!王が憎い!)

ム「ねえリチ、もう行く?」

リ「………すまん。ムーナ。俺はもう人を殺せない。もう王様の下で踊り狂うのは嫌なんだよ…」

その後長い沈黙がつづいた。長い沈黙が続いたあとに口を開いたのはムーナだった。

ム「………ふーん、そっか………ふふ…残念だったね…」

[ガチャ]

リ「!!」

ムーナはリチに銃を突き付け笑っていた。可愛い顔だが不気味で、全うな人間とは思えないほどの笑みだ。

リ「おいムーナ!これは一体…」

ム「ごめんねリチ。リチもう使えない。人を殺すの嫌になったんだもん。」

リ「な、なんで…もう金も貯まったじゃん!確かに楽しいとは思ってたけど、これ以上殺して何になる!もういいだろ!」

ム「ごめんねリチ。……私の理想はお金じゃない。……………………………………もっと上にあるの…………………………………」

笑ってたムーナの顔が一瞬真面目になって、また笑顔に戻った。

「ズドーン」

引き金が引かれた。

(俺は死んだのか…ムーナ…なんで?そうか、全ては法からか。畜生王が憎い王ガ憎イ王ガニクイおうガニクイおうガニクイおうガニクイおうガニクイ……………………………………………………)

この話は愚かで哀れな王が出した法に翻弄された愚かで哀れな人の話である。

怖い話投稿:ホラーテラー 初コメハンターさん  

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