中編4
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ひとりぼっちの平地の女

僕は、週に何回か夜にランニングに行くんですが、そのときあった話です。

僕は、いつもどうりに決まった道を走っていました。

時刻はもう、八時をまわったころだったので帰ることにしました。

ですが、帰る途中で雨が降ってきたんです。

「やっべ!!」

ちょうど前にバス停があったので(屋根つき)そこで雨宿りすることに。

家とは、結構な距離があったので、携帯で家に電話して迎えを頼むことにしました。

プルルル・・・プルルル・・・

しばらくて、母がでました。

「もしもし、俺だけど迎え来てくんない?今、〇〇のバス停にいんだけど・・・。」

母は了解し、今から行くといいました。

家からは、車で五分程度で着く距離でした。

少しの辛抱だな。

そう思い、しばらくボーっと目の前に広がっている平地を見つめていました。

「そういや、ここって昔 家が建ってたよな。」

普段は、考えもしない事で忘れていましたが、この場所には五年ほど前まで家が建っていたんです。

僕が小学四年生ぐらいのときに取り壊されてしまったんですが、確かに覚えています。

結構新しい家で、なぜ壊された分かりませんでしたが・・・・

確か、家の持ち主が居なくなったからだと思います。

そんなことを考えながら、迎えを待っていると、向かいの平地からこちらに向かってくる影が見えました。

それは、青い長そでを着た女でした。

女は、バス停の前まで来ると僕に軽く会釈をして脇のベンチに座ってきました。

なぜ、あんなところから現れたのか不思議でしたが、あまり気にせず迎えを待っていました。

すると、その女がいきなり話しかけてきました。

女「あなた、どこから来たの?」

一瞬ビクッとしましたが、無視するのも悪いので「〇〇からです」とだけ言いました。

というか、その質問はこっちのセリフ・・・

すると女はさらに質問。

女「これから、どこか行くの?」

なぜ、初対面の相手にこれほど話しかけてくるのか驚きましたが、まぁ そんな人も居るだろうと思い、「家に・・迎え呼んでるんですよ」と。

すると女は、悲しい顔をして

「なんで、帰っちゃうの!?」と言ってきました。

少し大きな声だったので少々驚きましたが、そう言われても困ります。

「ここに居てちょうだいよ」

何なんだこの人は・・・

意味が分からない。

何故、赤の他人のこの人にそんな事を言われなければならないのか、

というか この女は誰なのか?

だんだん、不思議が恐怖に変わってきました。

その女は僕に近づいてきて、とうとう肩を掴まれました。

ビックリするほど冷たい手でした・・・

「わぁあ!!」

思わず声を出してしまいました。

女はさらに詰め寄ってきます

女「ここに居てちょうだい!ずっとずっと・・・ここに・・・」

僕の恐怖は絶頂に達しました。

そのまま、バス停を飛び出し家に向かって走り出しました。

雨は激しく、痛いぐらいに僕の顔に当たりました。

後ろを振り向くと女がこっちを見て悲しげに立っていました。

何だったんだ、あの女は・・・!?

ずぶ濡れになって、やっとの思いで家の近くまで来たとき、前方の道にパトカーが数台止まっているのが見えました。

「なんかあったのかな?」

パトカーに隠れて見えませんでしたが近づくと救急車も止まっていたようです。

救急車はそのまま、誰かを乗せて音を甲高く鳴らし病院に向かっていきました。

「事故か。」

通り過ぎ際に現場を覗くと、僕は、仰天しました。

事故っていた車は、僕の母の車でした。

それと同時に、携帯に電話が・・・父からでした。

父「母さんが事故にあった。

今〇〇病院に運ばれてるから、これから向かう!

お前今、どこにいんだ!?」

僕「え、母さんが事故ったとこ・・・」

父「事故ったとこ!?じゃあ、救急車ん中か?」

僕「違う、救急車は俺が来る前に病院行っちゃった」

父「分かった!そこに居ろよ!!迎え行くから」

そのまま電話を切ると僕は事故現場をただ、見つめていました。

母の車のフロントガラスが少し割れていました。

しばらくして、父が着ました。

父に連れられ、病院に行くと母が額に包帯を巻いて椅子に座っていました。

事故は追突事故で、母の怪我は大したことはありませんでした。

ただ、頭を強く打っていたので今日は入院してくださいと医者に言われました。

父との帰り道、車であの女のことを考えていました。

もしかしたら、あの女が僕をあそこに引き止めておくために、母の車を事故らせたんではないか、と。

あそこで、僕が逃げていなければ実際、あの場所に引き止められていたわけですし・・・

後で父にあの平地の事を聞いてみたんですが、そこにあった家では二人の夫婦が住んでいたらしいんです。

ですが、夫の方が事故で死んでしまい、その後を追うように嫁の方も自殺したとか。

それを聞いて、初めてあの女の言っていた言葉が何を意味しているのか分かりました。

嫁の霊だという事は、もう察しがついていました。

それよりも、あのしつこい位に僕を引き止めた訳。

寂しかったんですね・・・

死んでからずっと、ひとりぼっちだったんじゃないでしょうか。

死んでからの五年間、ずっとひとりであの場所にたたずむ孤独と悲しみ

それを思うと、僕は少しかわいそうな気持ちになりました。

自分の大切な人が居なくなってしまう事、

それはとても、耐え難いものだと、僕は思います。

あの場所には今、新しく家が建っています。

そこの家の持ち主があの女の存在に気付いているかは不明ですが、これで少しは寂しくないんじゃないかと思います。

僕が祈るのは、あの女が家の住人の前に姿を現し、そこに住む家族が引っ越して また、ひとりになってしまわないことです。

怖い話投稿:ホラーテラー ネギさん  

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