短編2
  • 表示切替
  • 使い方

落ち武者

京都の友人から聞いた話を実体験風に書かせて頂きます。

あれは5年程前の蒸し暑い夏の夜の出来事。

当時付き合っていた彼女(以下A)が心霊スポットに行きたいと言い出したので、2人で行くのもちょっと怖かったため、友人(以下B)に電話しその友人の彼女(以下C)と4人で、地元ではかなり有名な心霊スポットへ向かうことになった。

向かっている道中、Bから聞いたところによると、Cは家族全員見える体質のようで、本当は来るのが嫌だったそうだ。

Cからも直接、遊び半分でそういう場所に行くのはよくないと注意もされたが、すぐ帰るからということで渋々納得してもらった。

件の場所に到着し、車を降りて辺りを見回す。

前方に古ぼけた看板が目に留まる。

旅館だ。

今はもう営業していないことが一目でわかるような旅館がそこにあった。

正面玄関まで来たところで、突然Bが叫んだ。

B「うわっ!!」

玄関の床辺りを見ながら固まるB。

何事かと視線の先を合わせてみると、そこには4足のスリッパが丁寧に並べられていた。

人が本当に驚いたときは思考が停止する、まさにそんな状態だった。

これは何かの偶然だと自分に言い聞かせ、ようやく我に返ろうとしたその瞬間、Cがガタガタと震えだした。

Cは涙を流しながら正面の受付を凝視している。

受付にはイメージ通りの落ち武者が座っていた。

全員「うわぁーーっ!!」

そんな声が出たのか出なかったのか、とにかく全員一目散に逃げ出した!

「カシャ カシャ カシャカシャカシャカシャ」

追いかけてくる!

とにかく走る!

車まで逃げ切る!

「カシャカシャカシャ!」

音が近付く!

最後尾を走っていた僕は勇気を振り絞って、『ぶわっ』と振り向いた!

その瞬間!

落ち武者も『ぶわっ』と後ろに振り向いた。

……

『いやおかしいやん!』

『お前の後ろ誰もおらんやろ!』

『お前から逃げとんねん!』

後になればこういった的確なツッコミを入れることができたんやろうけど、人は本当に驚いたとき思考が停止するためツッコめなかったとのことです。

長文駄文失礼しました。

最後までのお付き合いありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー たびがらすさん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ