中編2
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呼び鈴

10年ほど前。

私が大学生だった頃の話です。

前日の深酒を言い訳にしてその日の講義を全てすっぽかした私は、何をするわけでもなくダラダラと一日を過ごしていました。

そうして陽が傾きかけた頃、空腹に負けてようやく重い腰を上げて昼飯?を買いにコンビニに行くことにしました。

寝巻の上にジャージを羽織りお決まりの健康サンダルを履き家を出ました。

ドアの鍵を閉め、歩き出そうとした時でした。

ふと呼び鈴が目に留まります。

いつもと変わらないはずのソレが何故か気になってしかたありませんでした。

「押してみるか・・・」

「いや、意味わからんし」

「・・・でも押したいんよね」

「だけん意味わからんて」

そんな押し問答を心の中で繰り返していると、ひとりのワタシがこうつぶやきました。

「・・・だって誰か出てくるかもしれんやん」

「?!」

一瞬で全身が粟立ちました。

「いや、そんなんありえんし・・・」

動揺とジワジワと沸き上がってくる恐怖をごまかそうとして、そう言いかけた時でした。

呼び鈴の方向、壁一枚隔てた僅か1Mほどの場所から視線を感じました。

「やばい」

そう思った時にはもう動けなくなってました。

何かを観察するような、獲物をゆっくり絡め捕るような視線が私に纏わり付いてきました。

何とかこの場を離れようと力で強引に体を動かそうとした時、再び押し問答が始まります。

「・・・押したいなぁ」

「やばいって?!」

「押してみようか?」

「いや、やばいっ・・・」

「オシテみようヨ」

「ダメだっ」

「オ・す・よ」

「・・・?!」

もうひとりのジブンが呼び鈴に手をかけた、まさにその時でした。

???「お〜い。何しようとや〜?」

それは部活に行く途中、二日酔いでグダグタの私をからかうためだけにやって来た親友のSでした。

S「何や、自分家の玄関ジっと見つめて。まだ酔っ払っとるんやろ?」

私「うるしゃーて。ほっとけ。」

あまりに唐突に再会した日常に涙が出るほどホッとしました。

実際ちょっと涙目になっていた私にSは引いたようで「気持ち悪い」と言ってさっさと部活に行ってしまいました。

気が付けば視線も感じず、呼び鈴もいつもの表情に戻っていました。

狐に摘まれたような感覚を覚え、少し、考え込もうとしましたが、すっかりアルコールが抜けて元気を取り戻した私の胃袋がそれを許すはずもなく、すぐにコンビニに向けて歩きはじめていました。

以上が私の体験です。

あれが何だったのか、私にはわかりません。

酔っ払って妄想が暴走したのか、何かの拍子にいきなり自己暗示にかかってしまったのか。

そしてあのまま呼び鈴を押していたらどうなってしまったのか。

今となっては知る術はありませんが、何とも不思議な体験でした。

駄文にお付き合いくださりありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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