中編3
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二人の奥方

小泉八雲の「因果ばなし(乳房)」「耳なし芳一(盲目の琵琶法師)」を出していた先の方々が、読んだとか有名どころ出すなとか言われていたので(古典カテゴリなのだからそんなに怒らなくても・・)、念のため原題を先に出しておきます。

出典「耳嚢」、原題「婦人強勇之事」、なお拙い現代語訳の文責はこちらにあります。

ここまでで「この話なら知ってるわい」という方はスルーしてください。

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江戸時代の話。

ある旗本に奥方がいたが、奥方は娘を産んでまもなく亡くなってしまった。

娘が二歳になったとき、残された夫は再婚した。

新しい奥方が嫁いで何日か経ったころの話である。

奥方が幼い子供を寝かしつけてそばで裁縫をしていると、いつのまにか娘の枕もとに女が座っている。

年のころは二十歳ばかり、顔色は青白く、幼い娘の寝顔をじっと見つめている。

「・・どちらからおいでの方ですか?」

驚きを抑えて奥方は女に訊いたが、女は黙ったまま何も答えない。

「何のご用件でしょうか?」

奥方はさらに質問したが、やはり女は答えない。

仕方なく奥方は女をそのまま見ていたが、女はいつの間にか忽然と消えてしまった。

次の日、奥方はその家に昔から仕えている老女に昨夜の女のことを話した。

老女はその女の容貌・年格好を詳しくきくと

「それは亡くなられた前の奥様に違いありません」と言った。

新しい奥方はそれを聞いて考えた。

(私達が恨みをかう筈もなし、おそらくまだちいさな子供に想いが残って成仏できずにおられるのだろう。

この家に嫁いだ以上、あの子は私の実の子供と同じこと、どうしておろそかにするだろうか。

いや、実の子以上に大事にするつもりでいるものを、心に残して未だこの世に迷うておられるとは、なんともおいたわしいことだ。)

その夜、奥方が便所に行ったときのこと。

戸をあけてふと見ると、便所の小窓から、青白い女の顔が覗いていた。

間違いなく昨夜の女の顔で、無表情にじっと奥方を見つめている。

普通の女性であればそのまま悲鳴をあげて気絶してもおかしくない状況だったが、この奥方はしっかりした女性であったのだろう、静かに相手に話しかけた。

「あなた様は前の奥様でございましょう?

まだ若い男性が愛妻と死別してから後添えを娶るのはよくあることですから、あなた様は私どもに恨みがあっていらっしゃったわけではございますまい。

おそらくは幼いお子を気に掛けられてのことでしょう。

あの子は私が実の子と心得て大切に育てますから、どうかご安心くださいませ。」

女は何も答えなかったが、新しい奥方の言葉が通じたのだろうか、ふっとその姿はかき消えた。

前の奥方はそののち二度と現れることはなかった。

そしてその家は幸せに栄えたという話である。

(この話はこの家とつきあいのあった工藤平助なる人物からの伝聞の形で拾遺された。)

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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怪談(あえてこう言う)はひねりが足りないのが少し残念。
今みたいに怖い話に溢れてた訳じゃないし仕方ないか。