短編2
  • 表示切替
  • 使い方

僕のお姫様 後半(の後半)

いくらホラーに興味があるとはいえ、いわく付き厨房に深夜たった一人。怖くないわけがありません。

それでも僕は真夜中の料理修行を止めませんでした。

人間不思議なもので、見たくないと思えば思うほど、それに背を向ける事が出来ません。

例えどんなに不気味なモノでも、一応はその現象を確認しておきたいのです。

気味の悪い髪の毛を目撃してからというもの、僕は常に、例の隙間の真向かいに立つようにしていました。

その夜は確か、カセットコンロの上に鍋をのせ、美味しいだし汁の研究をしていたと思います。

!!

視界の上部に何かいます。

髪の毛がちらちらするのはその頃既に慣れていたのですが、それとは明らかに様子が違います。

(顔が、ある・・・生首、なのか?)

僕は恐る恐る顔を上げました。

(うわっ!)

そこには、お姫様としか言いようのない、上品な顔立ちの女の子がいました。

生首ではなく、首から下が透けている感じでした。何となく着物を着ているのが分かります。

チリ~ン・・・チリ~ン・・・

どこからか鈴の音が聞こえてきました。

!!!

一瞬でした。

一瞬、辺りが血の海になったのです。

(この娘、殺されたんだ)

何故か、はっきりとそれが分かりました。

ふと我にかえった時には、泣いていました。

そして、泣きながら、ある事に思い当たりました。

(子供じゃないか!子供が好きな物といったら、やっぱお菓子だろ!)

翌日の深夜から、僕の和のスイーツ作りが始まりました。

お姫様に少しでも美味しいお菓子を召し上がって頂く為に、研究に研究を重ねました。

そのせいかどうか判りませんが、霊的な現象は影を潜めていったのです。

あの料亭を辞めて、もう五年になります。

今でもあそこの厨房の冷蔵庫の上には、僕直伝の和菓子が毎日供えられている筈です。

僕は現在、某都市で和菓子店を営んでいます。京料理よりも自分に向いていたようです。

あそこに現れた子供の霊たちはみな、悲惨な死に方をしたのではないでしょうか(男の子の霊もいたようです)。

そして、その子らが地獄に堕ちないように手を差し延べた神様がいたとしたら?

その霊たちがその神様の一部だと言っても過言ではないような気がします。

神棚が壊されたのは、商売繁盛に利用しようという下心が本体の怒りに触れた、という事なのかも知れませんね。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ