短編2
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俊足の少年

私の通勤路には、高速道路の下を通っている所があります。まっすぐな見晴らしのいい国道なので、わりと遠目にも高速を走る車が見えます。

しかし、「北海道に高速道路を増やしたって車より熊の通行が多い」と某政治家が高速道路整備の反対意見の際に言ったように、無料化だの一律千円だのが無い場合は、北海道の田舎を走る際に高速道路を利用することはあまりありません。通勤路の上を通る高速もそんな道路の一部で、下を通る際に上で横切られるようなことは殆どありませんでした。

そんな利用度の低い道路ですから、そこを通る物があれば「珍しいな」と目に留まります。

流石に車種が何かといった細部まで見たりはしませんが、今朝通ったモノはあまりにも異様で目に焼きつきました。

車じゃないんです。人なんです。

たまーに徘徊老人や酔っぱらいが高速に紛れ込んで事故、なんてニュースがあったりしますが、田舎の高速道路ではそんなことはありえません。ウロウロして入れるような所は無いし、入れるような場所と人が歩くような場所とは離れているからです。まして、農業中心の地域ですから、個人の土地ですら「見渡す限りウチの敷地」みたいな場所です。十キロ単位で歩いてICなり人の入れる高さの場所へ行き、そこから更に数十キロここまで来るという、徘徊や悪戯で片付けることのできない問題を乗り越えなければなりません。

それなのに、高速道路を人が、それも物凄い速さで走っているんです。

高速道路をかっ飛ばす車すら、遠くから見ればさほどの速さには見えないというのに、それと同等の速さなんです。

しかもタイミングが悪いのかいいのか、私がその高速を通るものが一番よく見える距離と位置に来た時に向こうが丁度真ん中を走っていきました。

おかげでよく見えたその姿は、上着なしでは寒い季節と時間帯に白いランニングに白い短パン、痩せ細った体で、坊主頭の少年。イメージとしては昭和の陸上部の中学生、という感じでした。それが、高速道路を走る車のような速さで走り抜けていったんです。

格好や印象だけで、表情まで見えなくて本当に良かったと思います。思い出しながら書いているだけでも鳥肌が立ちますから。

帰りに、夜の暗さの中でも見えてしまうだろう白いランニングと短パン姿がないことを祈るばかりです。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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