短編2
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小さなパイロット

私は、某航空会社でB767、B777、B747の操縦資格を持つパイロットをしております。

私が、奇妙な体験をしたのは、今年の7月4日の事です。

その日は、羽田〜伊丹〜那覇〜羽田のフライトです。

朝、羽田のDP(その日の飛行計画や天候チェック等行う場所)で情報を確認した後、コーパイと私は、B777-300が駐機してある17番スポットまで、重いフライトバッグを引きながらターミナルを移動している時です、飛行機のオモチャを片手に握りしめた、見た目4〜5才位の男の子が、ガラス越しに離着陸する飛行機を、眺めていました。

一瞬、自分の幼き頃を思い出しながら、スポットに向かいました。

機に着いてまず、コーパイはCP(操縦席)で飛行データの入力。

私は、機材の外部視認点検、ふっ、と外からCPの窓ガラスを見ると、先程ターミナルで見掛けた、男の子がCP内から、こちらを見下ろしています。

まさかと思いながらも、CP内に戻ると、そこには当たり前の事ですが、男の子は見当たりません。

一生懸命データ入力している、コーパイだけです。

コーパイに男の子の事聞くのもおかしな話しなので、あえて語りませんでした。

気分を入れ替え、離陸準備です。

プッシュバック、エンジンスタート、フラップ10、タキシング。

滑走路出前で、管制塔に滑走路侵入報告、離陸開始報告。

離陸開始です。

離陸オートアイドルで自動的にスラストレバーが、前方に動きます。

万が一の為、パイロットはスラストレバーに軽く手を添えます。

その時、私の手の甲に、小さな手が後ろ補助席から伸びて私の手に乗せています。

まるで操縦しているかのように、私は計器を見るのと、操縦に集中しています。

気のせいと自分に言い聞かせ、その日の離陸開始速度150ノットに達し、コーパイが「v1」「v2」と言い、私は操縦かんを、引きます。

「ギアアップ」「フラップ5」飛行機は、ぐんぐん上昇していき、オートパイロットにセットし、私は、後ろを振り向きました。

当たり前です、誰もいるわけありません。

きっと、何かの理由で亡くなった飛行機好きな男の子が、霊となって現れたんだと思い、私は、その男の子を膝に乗せながら操縦かんを握らせてあげるイメージで操縦してました。

その時、ヘッドホンに男の子の声で、「ありがとう」と確かに聞こえ、私は、目頭が熱くなりました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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