子供の足が近づいて来る。
うわ~。
声を出してしまったら駄目な気がしたが、思わず声が出てしまった。
私の声に反応したのか、子供の足がピタリと止まった。
足だけを映している懐中電灯の光にググっと顔を覗かせてきた…。
そして一言。
『見~つけた。』
小さなおちょぼ口から低い地鳴りのような声が聞こえる。
『ギャーーー』
私は本当の本当に今迄に無いような恐怖感に襲われた。
私は逃げた、見回りなんかほったらかしで逃げた。
後ろからは、ペタペタと追いかけてくる足音が聞こえる。
ばっ!と部屋に入り込む。
ハァハァハァ。
明かりをパチっとつけた、どうやら中まで入っては来ないようだ。
ドアの向こうからは、さっきの声で何かをつぶやいている。
『出てきてよ』『遊んでよ』
その不気味な声に全身に鳥肌が立っていた。
テレビを付け、音量を最大まであげて声が聞こえないようにした。
………いつの間にか寝ていた。
時間を見ると、昼の2時だった。
え?
寝過ごした?
否、寝過ごしすぎた!
すぐに用意をして、表に出た。
…?
あれ?
何か違う。
この学校のここの校舎って…木造だったかな?
その時は寝呆けていたのか、気のせいと思い見回りを開始することに…。
授業をしている子供、先生、全てが何故か古く感じた。
キーンコーンカーンコーン。
休み時間になり、子供達がダァーと教室から出て来た。
私のまわりをぐるぐる回り、無邪気にキャッキャとはしゃいでは笑っている。
と、そこで1人虐められている女の子が目についた。
複数の男の子に悪口をいわれたり、叩かれたりしていた。
私はその男の子達を執拗に叱った。
先生でも無い私が何故そこまでするかというと、私も昔苦い経験があるからだ。
しょぼんとした男の子達が教室に帰っていった。
ふと私の服の裾を誰かが引っ張っているのに気が付いた。
さっきの女の子だ。
私『大丈夫かい?』
女の子『お兄さん、ありがとう』
私『何かあったのかい?』
女の子『別に…』
あまり話したくなかったのだろう。
少し気まずい雰囲気になってしまった…。
私『ごめんな…、私と遊ぶかい?』
この言葉に、女の子は満面の笑みで答えてくれた。
女の子『うん』
それから2人でかくれんぼをした。
最初は私が鬼。
2分程で、私が廊下の柱の影に潜んでいるのを見つけた。
次は女の子が鬼。
どこに隠れようか、あたふたしていた。
私はトイレに隠れた。
いつ見つかるか、少しドキドキしながら待っていた。
1分…3分…5分たっても女の子はこなかった。
キーンコーンカーンコーン
とうとうチャイムがなってしまった
。
難しかったかな…
少し悪いなという気持ちになった。
廊下からは子供達の声も消え、皆授業にもどったのかと、少し淋しくもなった。
そろそろ見回りを開始するか!
少し子供時代を思い出していた。
よし行こう!
トイレから出てみると、私は愕然とした。
今迄あんなに活気があったのに…廊下は真っ暗、人の気配などまるでなかった。
え?
え?
私は腰に掛けていた懐中電灯を点けた。
パッと明かりがつく。
あれ?
コンクリートだ…。
一体どうなってんだ?
混乱で頭を整理するのに時間がかかりそうだ。
あれは…夢か。
トイレで寝ていたのか…。
いやそんなはずはない。
確か………。
あの恐怖の体験が頭の中でカムバックした。
ゾッ…。
悪寒が走る。
ヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタヒタ
後から足音が聞こえてきた。
キィィィィィィン
凄い耳鳴りが私を襲う。
その瞬間私は金縛りにあってしまった。
目以外何も動かせない。
恐怖で汗の量がハンパじゃない。
フフ
あの低い地鳴りのような声で笑っている。
恐怖で足が震えている。
もうダメだ、心のなかで感じていた。
そして、私の持っている懐中電灯の光に女の子が顔をググっとあてて来た。
ニタ~と満面の笑みで笑う。
オカッパの女の子、歯茎が剥き出しになる程笑っている。
『見~つけた』
その瞬間気を失ってしまった。
気が付いたら、部屋で寝ていた。凄い量の汗で服はびしょびしょ、布団まで濡れていた。
まだ心臓が早いのがわかる。
タバコを一本。
ふぅ~。
少し考えた…。
もしかしたら、あれはあの女の子だったのかな。
今思えば、あれはあの女の子が見せた自分の過去…。私に見せたかったのか、何をしたかったのか、そこまでは分からないが、少し淋しい気持ちになった…。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話