短編2
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ホテヘル

一年半ほど前の事。

その日会社の奴と俺三人で飲み。

オッサン三人で飲みとくれば、次は下半身のケアなのは、世間のリーマンじゃそれなりに市民権得てるゴールデンコース。例にもれず店に行き、受付すませホテルへ移動。風呂入って、俺とお嬢ふたりで横になった瞬間それは起こった。

まず大体想像つくと思うが、ホテルのベットには有線のスイッチ、ボリューム切替、チャンネル切替の三つが備え付けてある。さわらなければ勝手に音楽がかかるハズはない。

ところが、俺もお嬢も触ってないが急に有線が入り音楽がかかりだした。

???な状況に不気味な沈黙が俺らを襲い、とりあえず有線をきろうとスイッチを触った瞬間、???が!!!になってしまうことが起こった。

有線をきれないのである。もちろんスイッチのボタンを確認して操作したわけたが、しかし有線は鳴り止まず次の瞬間さらに奇怪なことが起こった。

音量が尋常でないはやさで、大きくなり小さくなりしだしたのである。

これはただ事なわけないと確信に迫った時に、今度は、音楽がブツッ…ブブ…ブツッと切れだしたのである。

お嬢に聞いても、こんな現象は今までなったことない、と半ば放心気味。

とぎれとぎれの音楽が響く中、俺の中に不安と恐怖は徐々に大きくなっていき、放心のお嬢と若干狼狽気味の俺という滑稽な構図が出来上がっていた、その時。

ア゙〜ア゙〜ア゙〜

まるで、疲れた時に自然と出てくるような溜め息にも似た、しかしその中には微かな、尚且つ確かな悪意を感じとることのできる男の声が、スピーカーから鳴り出したのである。

聞いてしまった。いや聞こえてしまったのか。これはお嬢に確認すべきかどうか、お嬢をチラ見した瞬間、俺とお嬢は…バッチリ目が合った。

その時の俺の心の声は、あぁこいつにも聞こえた。その一文だけで俺の思考を断つのに十分すぎた。

残り時間なんぞお構いなしに俺はお嬢を促し部屋を出た。その後同僚と合流するまでの事をほとんど覚えていない。

特にエンターテイメント性のあるオチなんてないし、心霊現象に関する後日談もない。この話はこれにて終了。

しかし、俺が今だに戦慄してしまうのは、客観的にこの話を聞いた場合、どこぞでありふれてそうな話、ぐらいにしか思わないだろう。逆にこれぐらいの事であるならば、特に霊感の有無を問わず何人にも起こり得ることなのかもしれない。

怖い話投稿:ホラーテラー コウジロウさん  

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