俺の彼女は霊が見えるらしい。
彼女は東北の某県出身だが、イタコの血を引いている、とかではないらしい。
「私の実家がある村で生まれた人はほぼ全員が見える」
という。
その村は、彼女いわく寒村中の寒村で、昔、何と年貢の取り立てすらない程貧しい村だったらしい。
小さな畑とたんぼの収穫では生きるのが精一杯で、間引きや姨捨なんかみんな普通にやっていたという。
もちろん現代に生きる彼女がそんな事知る筈もなく、村の爺さん婆さんから聞いた話なのだそうだが、江戸時代、例年以上の厳しい寒波に見舞われた年があったらしい。
その村には、どうやってそこまで運んだのか想像もつかない程大きな岩があった(今もある)。
村人は昔からそれを神様として崇めていたらしいのだが、余りにも苛酷な毎日に、ついに堪忍袋の緒が切れてしまった。
「何が神様なもんか!何もしてくれねえじゃねえか!」
しめ繩をズタズタにし、その岩に向けて石を投げつける。
祟りなど恐れる者はいない。もう既に祟られているとしか思えない日々が長いこと続いているのだ。
その岩から芋が生えてきたのはその日から何日も経たない、大雪が降った日だった。
雪から芋が覗いているのを発見した村人が驚いて掘ってみると、岩から直接芋が生えていたという。
「飢えを凌げたのはいいんだけど、それかららしいの」
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話