短編1
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クリック

今日も残業だ。

今、オフィスには私しかいない。

キーボードを叩く音とマウスのクリック音が絶え間なく聞こえるが、それ以外の音は皆無だ。

この状況には慣れたものだが、稀に別の音に気が付くことがある。

『時計の針が回る音に気が付いたら廊下へ出る』

オフィスの壁に貼られた標語?の一つだが、来客がこれを読むと『?』という表情を浮かべる。

当然の反応だろう。部外者には意味が分かろう筈がない。

何はともあれ、私は無事に気が付くことが出来たので、ロビーで寛ぎながらこうして携帯イジリをしているのだが…。

3ヶ月前に辞めて行った二十歳の新人は運が悪かった。

私も『マズい!』と、思うことがある。クリック音と秒針が1コマ進む音は余りにも似ている。

彼は最後まで気が付かなかったのだろう…。

ぽーん。ぽーん。と、オフィスから時計の鐘の音が聞こえる。

必ず12回だ。

今、あのオフィスにはデジタルの時計しか置いていない。

かつては壁にアナログ時計が掛かっていたが今はない。

だが、間違いなくあの時計があった場所から秒針音が聞こえてくる。

鐘が鳴っている最中に出入口のドアのすりガラスを見ると、中で何かが蠢くのが確認できるが、それが何なのかを目視する勇気はさすがにない…。

さて…、打ってる間に鐘は止んだし、仕事に戻るかな…。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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