中編3
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柴犬のギン 2

五年も待たせてるのなら

かわいそうだ

そう思ったので

おじぃに連絡して

連れていくことにした

おばぁ達には軽くあしらわれてしまった

「おじぃ。元気か?」

「おぅ、晃弘(仮名)なんした?」

「おじぃなら信じると思って。

てか見えると思ったから」

「うん?なにがか?」

「実はさ・・・・・・・・・」

俺は少しまえから

ギンが現れたこと

実は鳴き声、俺も聞こえてたんだ的なことを話した

「そりゃ、さみかっちゃろう。あいも」(あい=あいつ)

「じゃぁ、あした行けそう?

急いであげたいんだよね」

「よかばい。 おいは何時でん暇かけん」(おい=俺)

「ありがとう。

それじゃ、またあしたね」

そうおじぃと約束して

電話をきった

その夜

リアルな夢をみた

懐かしい夢だった

ギンは

躾なんてあったもんじゃなく

ただただ自由に生活していた

(一応、おすわりとお手は出来たらしい)

なので

散歩のときは凄かった

行きたいところに全力で走るもんだから

リード持ってる俺は

引きずられるように走らなければいけない

おまけにルートなんて覚えてないので

思いつきで走るギンには

かなり鍛えてもらった

帰り着くまで走りつづけるし

今回の夢は

その散歩だった

おじぃはしっかりと歩いていて

リードを握っていた

俺はおじぃの後ろにいて

おじぃとギンを追い掛けていた

例の如くギンは

こっちのことなどおかいまいなしに突っ走るから

おじぃが心配だったが

夢のおじぃは違った

ハイスペックおじぃとでもいうのか

21の俺より軽やかに走っていた

散歩は

いまのおじぃ達の家から

スタートして

まえのおじぃの家に着いた

俺はなんとなくわかった

あぁ

ギンはまた

おじぃと散歩したかったんだ

まだここにいるよって

いいたかったんだ

おじぃは

ギンに向かって

「さみしゅうしてまたらんかったか?(寂しくて堪らなかったか?

え?

よしよし

またたくさん、ねこまんまでん食わしてやっけん

明日までまっとけ」

そういってリードを手放した

ギンは数回吠えたあと

おじぃと俺の手を舐めて

犬小屋に入って行った

やたら長い

そしてリアルな夢をみた

と、思っていた

その日は朝から

おじぃとドライブをした

ギンの好きだった缶詰を買ったり

昔話をしたりして

のんびり昔の家を目指した

昔の家について

俺にはギンが見えていた

おじぃを車からおろして

車椅子に乗せながら

おじぃに聞いた

「ギン、見える?」

「あそこにおるな。

懐かしかなぁ、待っとってくいたとか。あいは」

おじぃは嬉しそうに

車椅子を押しながら

ギンの方へ行った

ギンも嬉しそうに

カールしたしっぽを振っていた

そのあと

おじぃはギンと少し話したみたいだった

最後に

「また会いたかばってん

このままここにおさすっとはいかん(居させるのはいけない)

晃弘、塩ば降って、線香ば焚いとけ」

と、おじぃが言ったので

塩を振り、線香をつけて

缶詰を備えて

帰ることにした

最後車に乗るとき

ワンッ

と、元気な鳴き声が聞こえたのは

多分

気のせいじゃないだろう

帰り道

夢の話を

おじぃにしたら

おじぃも同じような夢を

みたらしい

「がばい走ったばい!気持ちんよかったっ!」

やっぱり

ギンが連れてきてくれたんだろうと

俺は思っている

おじぃも、もう思うように散歩出来ないから

あれから

ギンを見ることはなくなった

おじぃも

もう聞こえたりしないらしい

本当に旅立ったのかも知れない

以上

ギンの話でした

落ちなくてごめんなさい

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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